第2話・脳改造寸前に手術室を脱出……とにかく裸で戦えサカナ カナ

 華奈が裸で乗せられた、手術台の周囲に立っている人間の手術着姿の者たちが、白猫の改造医師を讃える。

「さすが、ニャゴ博士です……猫の手も借りたかった時期に、出張改造手術をお願いして申しわけありません……これはお約束の高級ネコ缶です」

「ニャアァ、ネコ缶」

 ニャゴ博士と呼ばれた白猫が手術室で、ネコ缶を受け取るのを手術台の上の華奈は、横目で眺める。


 ニャゴ博士が手術室から去ると、残った手術着姿の者が華奈に言った。

「さて、どこからどう話したらいいものかな……阪名 華奈、君の肉体は我が『秘密すぎる結社ネオ・ノットルン』が、世界征服の尖兵となるように改造した……どうだ、肉体改造されて嬉しいか」

 華奈の頭の周囲に『?』マークがグルグルと回る。


 別の手術着姿の男が、薄い手術手袋を外しながら言った。

「おいおい、そんな言い方じゃ説明になっていないから脳改造前の、阪名 華奈が混乱しているじゃないか……順を追って説明しないと」


 二人目の男の話しだと、クィーン・マザードンの尻尾の下敷きになって息絶えていた華奈の体を、緊急隊員を装ったネオ・ノットルンの戦闘員が現場から改造するために、こっそり秘密基地に運んできたらしい。


「阪名 華奈、君は高圧電流の衝撃にも耐えた……ニャゴ博士が言っていた通り、素晴らしい耐性の素材肉体だ」

「それは、どうも……あのぅ、そろそろ服を着せてくれませんか? 恥ずかしいんですけれど」


 二人目の男は華奈の要望を無視して、華奈の首に、薄いスカーフのような真っ赤なライダーマフラーを巻きつけた。


 改造医師の助手をしている若い二人の女性が、脳改造手術の準備をしながら言った。

「手術室に運ばれてきたのを見た時は、圧死されたミンチ状態で……こりゃ、ダメじゃないって思ったけれど」

「ニャゴ博士が、培養液に浸して様子を見るように指示して……その通りにしたら、イースト菌でパン生地が膨らむように、肉体が膨らんで潰される前の状態に戻った……不思議」


 華奈の頭の中でタマタマンの声が聞こえた。

《それは、オレのタマタパワーが華奈の死にかけていた肉体を再生復活させたからだ》


 医療器具がトレイの上に並べられ、吸引麻酔用の酸素マスクを持った男が、手足を固定された華奈の口にマスクを近づけながら言った。

「さあ、脳改造のお昼寝時間ですよぅ、ネムネムしましょうね」


 ブチ切れる阪名 華奈。

「脳改造なんてされてたまるか!」

 手首と足首の拘束具を力任せに破壊して外した華奈は、手術室で大暴れして大型電子機器を放り投げる。

「おりゃぁぁぁ!」


 手術室のドアをブチ壊して、壁にかけてあった白衣コートを裸身に羽織って通路に出た。

 基地内に鳴り響く、緊急事態発生のサイレントと基地内放送。


《脳改造前の、阪名 華奈が手術室から脱走しました……筋力強化はゴリラかクマ並みに強化されているので、基地内の戦闘員の方々は阪名 華奈を見つけても、絶対に近づかないでください……危険です》


 華奈は逃げ惑う、戦闘員たちを尻目に出口を探す。

(出口どこ? あっ、避難口の表示見っけ)

 避難口から出ようとしていた華奈の前に、茶色と黒のレディサンタクロースの格好をした女が立ちふさがる。


 基地内放送が、華奈の前に立ちふさがった女の正体を告げる。

《先輩怪人のブラック・サンタレディさん……阪名 華奈を捕獲してください》

 期間限定で制作改造された怪人『ブラック・サンタレディ』が内臓が詰まって、血の染みが浮かぶ袋を振り回して言った。

「悪い子はいねぇが……悪い子はサンタのソリに乗せてもらえねぇ、ブラック・サンタレディが臓物が詰まった袋でぶっ叩くぞぅ!」


 戦闘がはじまった、軽快な音楽が脳内に流れる中、華奈のキックが怪人ブラック・サンタレディの体に炸裂して。

 怪人ブラック・サンタレディは壁に激突して気絶した。

「キュゥぅぅ」

「弱い、弱すぎる……期間限定怪人」


 基地内の駐輪場にあった、通勤戦闘員の自転車を奪った華奈は、そのまま自転車をこいで。

 白衣コートを羽織って赤いマフラーを首に巻いた裸身のまま、自宅へと華奈は、高速道路を猛スピードでこいで自転車で帰った。

「どりゃあぁぁぁ、高速道路の風が気持ちいぃ」



補足・阪名 華奈がいる並列世界パラレルワールドでは、時速百キロを超えて高速道路を自転車走行しても罰せられません。

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