第1話・数年ぶりの怪獣活動期到来
怪獣やヒーローが日常的に存在している、並列世界の一つ──その世界に住む、女子高生『
「ジンくん、遅いなぁ……待ち合わせ場所は間違えていないはずなんだけれど?」
近所の公園ベンチに座って、スマホの画面から視線を外した華奈は、公園の入り口に視線を向ける。
今日は、つき合いはじめた隣クラスの男子『
「今日は、怪獣が出現しませんように」
数年前に
そして、近年──怪獣乙女や少女怪人が、再び活動を開始して、人々は不安な毎日を過ごすようになった。
突然、華奈のスマホから怪獣出現警報アラームが鳴り響いて。
公園近くの道路が盛り上がり、地中から二足歩行の巨大怪獣が現れた。
主婦エプロンをして、片手にフライパン、片手に買い物カゴを提げた地底怪獣の喉の辺りが自動ドアのように左右に開き、中から既婚女性の顔が現れる。
「夕食のメニューは、いつも悩むぅ……がぉぉぉ」
スマホで出現した怪獣を検索する華奈。
《原初母体AI女王既婚怪獣『クィーン・マザードン』夕食の買い物途中……必殺技は》
そう表示された、鼻の下にトランプキングのようなヒゲを生やした、クィーン・マザードンに続いて。
今度は、空から金色に全身が輝く巨大ヒーローが、着地の衝撃と土煙を上げて現れた。
「タマぁぁぁ!」
《謎の黄金巨人ヒーロー『タマタマン』……怪獣を退治してくれる……たぶん》
額に、ギザギザナイフのようなサイ角が突き出た、金色のタマタマンと。
買い物途中のクィーン・マザードンが激突する。
怪獣の既婚女性と、股間に金色の二つの球体が見えるタマタマンのプロレス戦い。
被害を最小限に押さえるための、リングのような支柱が地面から出てきて、光りのシールドのようなモノで四角く隔離される。
阪名 華奈は、リング状のバトルエリアに閉じ込められた。
「あなたぁ、少しは家事も手伝ってよう! がおぉぉぉ」
クィーン・マザードンが、タマタマンを光線の膜にフライパンで弾き飛ばすと、リングロープのような弾力で弾かれたタマタマンの体は、クィーン・マザードンの方に反転してフライング・クロスチョップをクィーン・マザードンの喉元に浴びせた。
「いたぁ、人妻になにするのよ!」
怒ったクィーン・マザードンは長い尻尾を振り回してタマタマンを攻撃する。
「タマぁぁぁぁ!」
タマタマンの手から発射された光線がクィーン・マザードンの尻尾を切断して。
切断された尻尾が、華奈の方に飛んできた。
「えッ⁉」
華奈の視界は怪獣の尻尾の陰から真っ暗になって、意識が途切れた。
◆◆◆◆◆◆
華奈は形容しがたい空間に両目を閉じた状態で、仰向けになって浮かんでいた……なぜか裸で。
両目を閉じている華奈の目に、立っている金色のタマタマンの姿が見えた。
タマタマンが頭を掻きながら、華奈に言った。
「悪りぃ、切断した怪獣の尻尾で圧死しちまった……阪名 華奈、君は死んだ」
両目を閉じた裸の華奈が、タマタマンと会話をする。
「死んだって……あたし、デートでジンくんと待ち合わせをしていただけなのに……どうしてくれるんですか!」
タマタマンが股間の球体を一つ、引っ張り取る。
引っ張り取られた球体はすぐに再生する。
「悪りぃって謝っているだろう、不慮の事故だ運が悪かったな……だいたい、あんな所にいた華奈が悪い……そうだ、オレは悪くない」
「勝手なコトを……ち、ちょっと、手に持った金色のタマを、あたしの体のどこに入れようとしているんですか! 変態ヒーロー!」
「黙っていろ、地球人の生命エネルギーの出入り口を探しているいるんだから……ふふふっ、この窪みか。生命エネルギーのタマを挿入するぞ」
「いやぁぁぁぁぁぁ、変なモノ入れないで!」
華奈の穴に沈んでいく金色の球体……生命エネルギーの球体は、華奈のヘソの穴から体内に吸収された。
タマタマンが言った。
「オレは何個かスペアの命を持っている……その一つを華奈の体内に入れた、これで華奈は生き返る」
「あたし、生き返るんですか?」
サイの角ように額から突き出た鋭い角を、布で磨きながらタマタマンが言った。
「生き返させる代わりに条件がある、生命エネルギーを分け与えたから。この星での巨大ヒーロー活動がしばらくできなくなった……華奈の肉体に憑依するから、代わりに巨大化して怪獣乙女と戦ってくれ」
「えッ?」
「外部の華奈の肉体への改造手術も終わったようだ……裸で戦え! サカナ カナ」
「ち、ち、ちょっと状況がまったく理解できないんですけれど? 改造手術ってナニ?」
タマタマンは、華奈の質問を無視して、仰向けになった華奈に向かって倒れて、重なるように融合していく。
異質な存在との融合に恐怖する華奈。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
◆◆◆◆◆◆
「あ、あ、あぁぁぁ!」
華奈は全身に流れる高圧電流に、体を激し痙攣させて意識を取り戻した。
「うぎぁぁぁぁ? な、な、なにぃ? いったい何が起こって?」
目覚めた華奈の目に映ったのは、手術室の無影灯の光りと、手術マスクをして顔を覗き込んでいる白猫だった。
(ここ、どこ?)
起き上がろうとした華奈は大の字に手足を拡げた格好で、両手と両足首が固定されて手術台のような場所に乗せられていたのに気づく……しかも全裸で。
(なにこれ? あたし、夢から覚めても裸?)
手術着姿の白猫が言葉を発する。
「改造手術は成功したニャン、思った通り……怪獣の尻尾に押しつぶされても、生命力が並外れて強い女子高校生だニャン」
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