第15話 火炎侯爵の孫

 火炎侯爵の孫。

 そのレッテルは大きかった。

 なぜ、火炎侯爵が出来て孫であるハルガド・フォボメットは出来ないのか!

 そんな事ばかり比べられてきた。


 現在、ライクド領主の屋敷にて領主がやってくるのを待っている。


 軍師として領主として。

 やれる事はする。


 火炎侯爵が出来なかった事。

 この国の統一だけではなく、大陸全土を統一する事。


 その覇王の道には障害物が近くにいた。

 それこそがガルフ・ライクドである。


 奴の人望は今うなぎのぼりになっている。

 正確には恐怖支配なのかもしれない。


 たかだが数人で1500人以上の兵士を皆殺し。

 容赦のない判断力で敵を殺す。


 恐ろしい噂ばかりだ。

 さらには賢者ナタリーの攻撃でも死なず。

 今やナタリーは捕らわれの身と聞いている。


 ナタリーには思い出はあるが、切り捨てる女の1人だと腹を括っている。


「ハルガド様、どうやら奴がくるそうです」


「先程の女性、人間ではなかったな、背中にだが翼があった。あの女も手に入れておきたい」


「御意でございます」


「メッサー将軍、狂戦士ゼーニャの噂は知っているか?」


「絶世の美女だとか」


「どうにかそいつも手に入れておきたい、ハーレムを作るのが夢だ。それぞれの技術に秀でている者を集める」


「ほっふぉ、ハルガド様は女にはめっぽう厳しいですからね、その顔でいつも騙してらっしゃる」


「メッサー将軍、言葉が過ぎるぞ」


「御意」


 メッサー将軍は火炎侯爵の親友でもあり、今は老齢の将軍だ。

 火炎侯爵祖父がハルガドが領主になったときに手配してくれた1人の人間でもあった。


 その時だ。

 物凄く体温が熱くなってきた。


 いや、何かが燃えているのか?


「火事か?」


「いや、これは、何かが燃えています」


 扉が開かれる。

 全身が燃えている男が入ってきた。


「やぁ、ハルガド領主、会いに来てくれて嬉しいよ、ささ、交渉って何だい」


「ぐ、なんだ、これは」


「も、燃えているぞ」


「ごめんね、さっき賢者ナタリーが燃やしてくれたんだけどなかなか消えなくて」


「な、ナタリーだと、あいつはまだ殺そうとしているのか」


「いやいや1度殺されたんですよ」


「なにぃ」


「でも、生き返っちゃってさー」


「いやありえんぞ」


「いえ、ハルガド様現に、ガルフ領主は燃えても死んでません」


「た、たしかに」


「納得しないでくださいよ、これはありえませんぞおおお」


「あ、すみません、領主、この人頭がおかしいので気にしないでください」


「き、君は狂戦士ゼーニャ、う、美しい」


「それはおいといて、交渉でしょ」


「ゼーニャ、いや、これは交渉できる場合じゃ、ガルフ領主の治療を、頭も燃えてるから頭の治療も」


「気にしないでください、この人そう簡単に死ねないですから」


「死ねないとは?」


「死んだら、生き返るまで殺すだけです」


「ぜ、ゼーニャさん、それでは本末転倒では」


「だから、燃えてるんですってええええええ」


 そこへ賢者ナタリーが乱入してくる。


「な、なたりー」


「ハルガド様、お久しぶりです」


「今交渉でしょ、はやくやろうぜ、お、2人は知り合いか」


「今それどころじゃないでしょーあなた燃えてるのよ屋敷が燃えたらしゃれにならんでしょ」


「この炎すげーな、賢者ナタリー俺にもこの魔法教えてくれよ」


「ぐうう、意味が、理解が頭がああああああ」


 ハルガド領主がパニック寸前になりそうになってくると。


 なぜか、革袋をかぶるハルガド領主。

 その場の全員が唖然とする。


「すーはーすはーすはーすはー」


「すみません、ハルガド領主はパニックになると革袋をかぶらなくちゃいけないんです」


 メッサー将軍が解説してくれる。


「お、落ち着いた」


 現在炎が沈下した全裸の領主ことガルフがいる。


「きゃあああああああああああああ」


 ゼーニャが半狂乱になって、服を取りに行ったようだ。


「では、交渉の場だが」


 ガルフ領主が気を取り直して、みんなの前で服を着ている。


「こ、こんなに無能なのかこの領主は」


「いや、正確にはバカなんでしょうね」


「いきなり豹変されるかもしれん、メッサー将軍言葉に気を付けろ」


「すみません」



「じゃあ、ハルガド領主、交渉とは?」


「ああ、そうだな、話をしに来た。魔王らしき人物を見つけた」


「ほほう」


「モンスターを大軍を率いていた。正確には8体なのだが、もはやSSSSS級のボスモンスターばかりなんだよ」


「そんな危険な話が」


「ああ、フォボメット領地の近くでなんか始めたんだ。頼む力を貸してくれ」


「ああ、良いぜ」


「そんな簡単に決めないでくださいよ魔王と言えば大惨事ですよ」


 リンデンバルク執事長があたふたする。


「それなら、魔王には魔王をぶつけようと思う」


「魔王がここにいるんですか?」


「元魔王だが」


「それは物凄い」


「元魔王クウゴロウがいる。さてと、ロイガルドを呼んでくれ、あいつクウゴロウと酒飲んでただろ」


「御意です」


「でだ。ハルガド領主よ交易もしたいのだが」


「そうですね、我が領地では鉱山地帯が盛んでして、宝石がちりばめられております」


「あ、それならアキレスドンを呼ぼう」


「アキレスドンとはあの伝説の?」


「そんな所だ」


 それから、会議はさらなる飛躍を求めて進化し。


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