第11話 ゼーニャの尋問

「で、その女は何?」


「えーと、この人に殺されかけまして」


「手出したの?」


「えと、違いまして、本当に殺されかけまして、魔法使いだから色々と教えてもらおうと説得しまして」


「へぇ、手出して殺されかけてさらに魔法を教えてもらおうって?」


「ゼーニャさんどうか誤解を解いて欲しいのですが」


 ガルフ・ライクドは現在武器を握っていない。

 あの剣が魔法の剣だと言う事が判明した今、父上の剣は大事にしようと決意していたのに、それはさておき、本当に賢者ナタリーに殺されかけたのだが、いや殺されたが正しいのだが。

 誰も信じてくれない。


「とほほ」


「良い、ガルフ様、女に手を出したら責任を取るのよ」


「はい」


「その賢者ナタリーさん? ごめんなさい、ガルフ様が手を出したようで」


 そう言いながら、ゼーニャの顔は笑っていない。


「い、いえ、手は出されていません、ただ誤解があったようで」


「そうですか、魔法を使えるようですし、いい機会ですから、ガルフ様に魔法を教えて下さらないかしら、私は魔法はからっきしだし、パトロシアさんとかロイガルドさんだと高難易度の魔法だしね」


「魔法スキル系を習得していると覚えやすいですが、魔法は魔力操作からなされるものなので、スキルはあまり関係ないですし、ガルフ様なら習得出来ると思います」


 そう答えた賢者ナタリーの顔も笑っていなかった。

 どちらかと言うとなぜ殺そうとした相手を強くさせなきゃいけないんだ?

 という表情だ。ガルフとしては複雑な心境だ。


「賢者ナタリーあなたはどこの所属なんですか?」


 それは先程まで黙っていたリンデンバルク執事長であった。

 彼は眉間にしわを寄せている。


「賢者とは領主の顧問になる事が多い、あなたはもしかして」


 賢者ナタリーが生唾を飲み込む。


「あなたはフリーだったのですね、最近修行を終えたのかな」


「は、はい、そうですわ」


 賢者ナタリーが少し笑いそうになっていたが、ガルフはまだ正座させられている。

 

「誤解も解けた事だし、賢者ナタリー色々と紹介するわね、こっちに着て」


 どうやら賢者ナタリーとゼーニャメイド長の息は合うようだ。

 ガルフとしてはほっとしつつも。


 2人が領主の部屋から出ていくと。

 リンデンバルク執事長が隣にやって来た。

 ガルフは立ち上がり、痺れている足を回復させながら。


「ガルフ様も災難でしたね、何があったら黒焦げになるんですか」

「本当に死んだんだけどね」


「ご冗談を」

「いや、死んだんだよ」


 誰も信じてくれないけど、確かに父上の顔が見えた気がしたんだ。

 だが、そこは別な世界だった気がするんだけど。


「ガルフ様、リサイクルガチャスキル用のリサイクル品を多く集めています。集まり次第、ご連絡しとうございます」


「うん、ありがと」


「あと、密偵の情報によりますと、各地の領主達はガルフ様暗殺計画を企てているようです。身の安全をちゃんとしてください」


 だから1度殺されたんだってとは言えない。


「うん、わかったよ」


 その時だった。

 領主の屋敷がどすんと言う音が響き割った。

 アーザーが右手に巨大な虎王の生首を持っている。


「おい、後2つだ。この死体を貯蔵庫に持ってきた。どうせリサイクルするんだろ」


「助かるよーアーザーあと2つ倒して覇王を倒すと無限ダンジョンも攻略かー」


「思ったのですが、無限ダンジョンから色々な資材を獲得できないでしょうか、モンスターの素材も貴重で、リサイクルにするより何か別な方法も思案せねばなるまいと」


「じゃあ、無限ダンジョンにキャラバンでも設立しようか」


「派遣部隊ですね、それならこちらで準備いたしましょう」


 その時、領主の屋敷にちょうど冒険者ギルドマスターで農業担当のミヤモトさんがやってくる。


「ああ、大体は聞いたぞ、5人程目星のつく冒険者がいるからお願いしてみる。無限ダンジョンで発掘可能な素材、モンスター素材の配達。それも考える必要があるな」


「ただ。普通の冒険者では危険かと」


「なら、大丈夫だ。全員がSSS級だからなどこぞの国を追放されたパーティーらしい」


「そりゃいいや、そうかどんなもんなのか、俺も行くよキャラバン設立の時にでも」


 ミヤモトさんは頷くと、アーザーと共に消えていった。

 ガルフは準備を整え始める。


 次は無限ダンジョンでの探索。

 久しぶりの冒険。

 

「何かあったら連絡してくれ」


「御意」


 世界樹の飲み物の効力で、遠距離連絡が可能となっている。

 1つ1つ領地発展。

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