〜初めて出来た親友とお泊まり会〜
小雪ちゃんと出会ってからの日々は私にとって初めての連続だった。
初めての親友と初めての約束に初めての遊び。
2人で小雪ちゃんの住んでいる町を覗きにいったり、山で一緒に山菜をとったり、誕生日に髪飾りをプレゼントしてもらったり。
小雪ちゃんと過ごす毎日は私に沢山の初めてをくれた。
大袈裟じゃなく、全く新しい世界に生まれ変わったかの様な、夢と魔法で溢れた御伽話の中で暮らす女の子になった様な、私の有している言葉では表現しきれないくらいの幸せでいっぱいの日々だった。
『セツはさぁ〜夢とかないの?』
『えっ?夢⁇』
『将来何かになりたいとかさぁ〜、世界のどこかに行ってみたい所があるとかさぁ』
将来何になりたいだとか、世界のどこかに行きたいだとか、考えた事もなかった。
だけど…
『夢はあるよ』
『何々ぃ〜、セツの夢、親友の私に教えてよ』
『私の夢は、雪女とお友達になる事…だけど、もう叶っちゃったよ』
『だから、私は雪女じゃないって…』
『違うよ、雪女はもういいの、だって雪女よりももっと素敵な女の子とお友達になれたんだから、私の夢は叶ったどころか夢を超えちゃったんだよ。私、今とっても幸せなの』
ガバッ‼︎
一瞬、何が起こったか分からなかったけれど、どうやら小雪ちゃんが私の事を抱きしめているようだ。
『なんだよ、やめてよ、そんな小動物みたいな目で見つめながら、そんなセリフ吐かれたらさぁ〜』
どうしたのだろう、小雪ちゃんの声は震えているみたいだ。
『小雪ちゃん、ごめんね』
『何で謝るのよ、私もあなたに会えて嬉しいんだよ、私の夢はさぁ〜、セツが幸せに笑って暮らしていられる事なんだよ』
小雪ちゃんの体温が伝わってきてとても暖かくて気持ちが良くて幸せでいっぱいだ。
『そっか、なら、小雪ちゃんの夢ももう叶ったね』
それからも小雪ちゃんとの幸せな日々は続き、小雪ちゃんと交わしたいくつかの約束の内の一つを実行する日がやってきた。
『おばあちゃんに小雪ちゃんを紹介するの楽しみだなぁ〜』
『セツ、本当に大丈夫なの、前もっておばあさんの許可取っておかなかったんでしょ?』
『大丈夫‼︎おばあちゃんも私が小雪ちゃんを連れていったら絶対に喜ぶよ』
私は本当に心からそう思っていたのだけれど、現実は違った。
『セツ、どういう事だい?』
今まで怒った所を見た事のないおばあちゃんの表情には怒気が現れ声音も怒りで満ちている。
『お友達を連れてきたんだよ?小雪ちゃん。今日は私の家でお泊まり会をするの』
『何を言ってるんだい?ダメに決まってるだろ。雪女と人間が一緒に寝たりしたら人間は凍えて死んでしまうよ』
あぁ、そうか、おばあちゃんは小雪ちゃんの事を雪女だと勘違いしてるんだ。
まぁ、無理もないよね、小雪ちゃんってどこからどう見ても雪女だもんね。
『あのね、おばあちゃん。小雪ちゃんは雪女じゃないんだよ、確かに雪女みたいに綺麗だけれど、普通の人間の女の子なんだよ?』
『ダメなものはダメだ、その子には気の毒だけど帰ってもらいなさい』
すごい剣幕で捲し立てるおばあちゃんに小雪ちゃんの手前、私も言い返してしまう。
『おばあちゃんの分からずや‼︎もういいもん、行こう小雪ちゃん、私の秘密の隠れ家があるの。とっても素敵な場所なんだよ』
『でも、セツ。おばあさんが…』
『いいのいいの、あんな分からずや、もう知らないんだから』
私はおばあちゃんに背を向けると、小雪ちゃんの手をとって駆け出した。
『セツッ‼︎お前は…』
おばあちゃんが必死に何かを言っている様だけどもう聞こえない。
今日の小雪ちゃんとのお泊まり会をずっと楽しみにしてたんだから、おばあちゃんの事なんか気にしないで、小雪ちゃんと楽しい夜を過ごすんだ。
『おばあさん、本当に大丈夫なのセツ?私、今日は帰ろうか?』
『大丈夫だよ‼︎ほらっここ。ここが私の秘密の隠れ家何だよ』
まだお母さんが生きていたこどもの頃に一緒に遊びに来ていた山に開いた大きな横穴。
中は私のお気に入りの物で溢れた素敵な空間が広がっている。
『わぁ〜凄いじゃん』
目を輝かせる小雪ちゃんの表情に私はとても嬉しくなる。
『でしょお?今日は楽しい夜にしようね‼︎』
ずっと楽しみにしていたんだから、おばあちゃんには邪魔されちゃったけど、もう大丈夫、だって小雪ちゃんもこんなに喜んでるんだよ?だから今日は2人だけでお泊まり会を楽しむんだ。
自分のお気に入りの場所に、人生で初めて出来た大切な親友が遊びに来てくれている。
こんな幸せな出来事が起こるなんて、思いもしなかった。嬉し過ぎてニヤニヤが止まらない。
お母さん、お空の上から見てくれていますか?
私はとっても幸せです。
小雪ちゃんとの2人っきりのお泊まり会が始まるんだから。
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