〜雪女との出会い。ヤバイ綺麗過ぎて泣きそう〜

 『ハァ…ハァ…ハァ…』

 

 『……。』


 『ハァ…ハァ…ハァ…』


 『……。』


 『ハァ…ハァ…ハァ…あぐぅっ…』


 『あのぉ〜、何ですか⁇私に何か用ですか⁇何でもないんなら、どいてもらえません⁇邪魔なんですけど…とっても』


 雪の様に白い肌で白銀の長髪の美少女の声が想像の何倍も綺麗だったので泣きそうになるのを堪えた私は何とか言葉を搾り出す。


 『あっ…のっ…すっ、すすす、すきすっ、好きです』


 『はぁ?私女の子に告られても全然嬉しくないんですけど』


 不審げに私を睨みつけるその表情すらも綺麗過ぎてまたもや泣きそうになるのを堪えながら私はまた言葉を搾り出す。


 『まっ、間違えた。雪女っ‼︎あっ、あなたは雪女ですよね⁇』


 興奮のあまり今まで出した事のない高音ボイスで鼻息あらく視点も定まらない私はキモいと思われてしまっただろうか、などと考えていると。


 『はぁ?何なの⁇雪女とか失礼じゃない?それならまだ愛の告白の方がマシだったんですけど』


 『あっ、あ、ごっ…ごめんなさい。雪の様な白い肌で髪の毛も白銀でサラサラだしあまりにも現実離れした綺麗さだったので、私てっきり、あなたは雪女なのかと勘違いしてしまって…わっ私、雪女の事、大好きなんです』


 『ふぅ〜ん。まぁ、美人って表現したかったって事なら嬉しいし、ありがとう』


 彼女が笑う顔を初めてみた私の目から一筋の涙が流れ落ちる。


 『ちょっと、あなた泣いてるの⁇どうしたってのよ?』


 睨みつける表情も笑う顔も心配する顔も彼女の顔は本当に綺麗だ。


 『なっ、名前は?』


 『はっ?』


 『あなたの名前を教えてくれませんか?』


 彼女は私を頭の先から足の先まで値踏みする様に見た後でつぶやく様に名を告げた。


 『小雪』


 『やっ、ややや、やっぱり、やっぱりそうだぁ~‼︎』


 興奮した私はつい小雪ちゃんの手を取って小躍りしてしまう。


 『何っ?本当になんだっていうのよ⁇』


 『間違いない‼︎雪女だぁ〜‼︎』


 『だから違うって言ってるでしょ』


 小雪ちゃんが私の手を振り解く。


 『ごっごめんなさい』


 やってしまった。


 私は調子に乗って、せっかく出会えた小雪ちゃんを怒らせてしまった。


 『教えなさいよ』


 しょんぼりと肩を落としていた私が顔を上げて声のする方に目をやると小雪ちゃんの力強い目が私の目をしっかりととらえる。


 『えっ⁇』


 『名前‼︎私も教えたんだから、あなたも教えなさいよ。なんて呼んだらいいか分からないでしょ?』

 

 『セツ』


 『ふぅ〜ん。良い名前じゃん』


小雪ちゃんが私の名前を褒めてくれた事に対する感動のあまり私は一人で踊り出してしまう。


 小雪ちゃんの冷たい視線に我を取り戻した私は、咳払いをして気持ちをリセットした後で勇気をだして言葉を搾り出す。


 『小雪ちゃん…わっ、私と、とっ、とと、とととっ、とも、ともだちだち、なって、友達になってください‼︎』


 『はぁ〜?何言ってんの⁇』


 『やっぱり、ダメだよね』


 小雪ちゃんは、俯いて今にも泣き出しそうな私の右手を優しく握りしめた後で


 『あたし達、もうとっくに友達でしょ?もしかして友達って思ってるのは私の方だけだった感じ?めっちゃ恥ずいんですけど』


 『とっ友達‼︎私達は友達‼︎やったぁ〜、私、雪女と友達になれたんだぁ〜‼︎』


 『だから雪女じゃないって言ってるでしょうが‼︎』


 私の頭を小突く小雪ちゃんの笑顔が可愛すぎて私は自然とニヤけてしまう。


 『やったぁ〜‼︎人生で初めてのお友達が出来たんだぁ』


 『あたしも』


 『えっ⁇』


 『あたしもセツが人生で初めての友達だよ』


 嬉しすぎるあまり、気付いた時には私は人生で刻んだ事のないステップでダンスしながら発狂していた。


 『よろしくね親友』


 小雪ちゃんが差し出す手を握り返す。


 『よろしくね小雪ちゃん‼︎やったぁ〜私の親友は雪女なんだぁ〜‼︎』


 『だから雪女じゃないっての』


 またもや小雪ちゃんに小突かれるが今の私にはそれすらも幸せに思えてしまう。


 『想像以上に最高の日になったな』


 『んっ?何か言った⁇』


 『うぅん。なんでもない』


 『あっそ』


 『小雪ちゃん。よろしくね』


 『うん。よろしく。セツ』


 お母さん、雪女ではなかったけれど、私に出来た人生で初めてのお友達は、とっても素敵な女の子です。


 


 

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