好奇心
會澤キリ
第1話
私は私の最期の景色までしっかりと私が望んだ
ようなものであったと思う。
私は元来、恒星によって煌めく宇宙という事物
に羨望なのかもわからない多大な好奇心を抱い
ていた。そして私の最期もまさにそのような景
色であった。
夢から醒めろとばかりに乾いた銃声が響いてい
た以外は。
ある日、「兎に角にも暇だ」などと呟きながら
テレビを見ると、最近よく見かける連続殺人の
ニュースが流れていた。死因は銃殺や殴殺など
様々らしく、また驚くべきことにまだ犯人が誰
なのかもわかっていないらしい。まったく物騒
な世の中になったものである。そんな他愛もな
いことを考えているとインターホンが鳴った。
私は「おっ、先週頼んだ私の趣味の類のものが
届いたかな」と少し期待しながら扉を開けると
なんと警官が警察手帳をこれでもかと開きなが
ら立っているではないか。そして何やら連続殺
人がどうのこうのと言っているが、生憎私は望
んでいた宅配ではなくて少し腹が立っている。
そういうわけで私はことごとくを無視し、少し
ストレスを発散してから趣味の一つである釣り
に繰り出した。それからしばらくたって、夜景
が星空と区別がつかないほどになり、いざこれ
からだという頃に今度はピーポーピーポーやか
ましい音を鳴らしながらパトカーが集まってく
る。流石の私もこれでは魚が逃げてしまうでは
ないかと腹が立ったので少し釘を刺そうと意気
込みパトカーどもに近づこうとした時、パンパ
ンと乾いた音が鳴り響き、するとどうだ、私の
胸から大量の血が噴き出してるではないか。こ
うして私は私の知らないうちに死の間際になっ
たわけである。そこでこのような時、人は走馬
灯というものを見るらしいので私も一つ自分の
人生を思い返してみようかと思う。そういうわ
けなのでどうか付き合っていただきたい。
さて、私の名前は三枝 灯という。まあ姓は至っ
て普通だが名に関してはそこそこイケているの
ではないかと自負している。そして先に語った
が私は宇宙に強い憧れを持っており、宇宙のこ
とについてあれこれ考えて妄想を膨らませなが
ら生きてきた。まあ憧れを抱いた理由というの
は普通であるがまさしく知的好奇心である。ま
あ自分でも好奇心は強い方ではあると思う。そ
んなこんなで大学まで私は自分の好奇心をどう
満たせるかという物差しで生きてきたわけあ
る。ここから私の人生はとても鮮明なものにな
っていくのでここからは詳しく語らせていただ
こう。まあ私の人生の転換期と言えばまさしく
ここであろう。そう、ちょうどあの時、大学院
での友人である長田と共に宇宙に関しての議論
に熱を入れている最中であった。私達は帰宅路
につきながら宇宙についてに花を咲かし、気付
けばバスに乗っており、気付けばあと2つで我
が家の最寄りであるということに気づいた。す
ると次の瞬間、これぞ犯罪者という風貌の目出
し帽をした流石に男であるだろう者達が何人か
でわらわらと乗ってきたではないか。そしてそ
こからはドラマなどで観たものより案外スムー
ズであった。当然のようにその者達は拳銃を
取り出し怒号を発し、そして当然のように乗客
のうちの何人かが撃たれ、また当然のように突
如現れた警察に取り押さえられた。
そして、当然のように私の足下には拳銃があった。
加えてその時私はそれに対して宇宙に抱く想い
にも似たものを抱いていた。ほっぺが落ちるよ
うななんというか兎にも角にも私はそのような
感情を抱いたのであった。そこから私はそれに
抱いたとても強い好奇心を満たさないわけには
いかなく、私はそれを何回もさまざまな使用方
法で使った。ある時は通常通り使用し、またあ
る時はそれで殴るように使用してみたり、まあ
様々な方法を何回にもわたって試した。弾がな
くなり宅配で頼むくらいには試したわけであ
る。そしてその度に私は自分の好奇心が満たさ
れていく充足感を味わい、それと同時に我が人
生は鮮やかなものになっていったと私は明確に
感じている。というような感じで私はこのよう
な訳のわからん終わり方ではあったが自分の人
生に関しては案外満足している。最期も夜景と
パトカーの光が何だか宇宙に煌めく恒星のよう
で美しいと感じた。
まあ終わり方あまりにも理解不能といった感じ
ではあるが、
まあ案外こんなもんなのかも知れないなあ。
好奇心 會澤キリ @iw4_kud4ku
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