第3話 瓢箪からねこ

「おはようですにゃリョウ様」


「ん、おはよー」


「ニャッス!今日もいい天気ニャッスねリョウ様!」


「だなー、絶好の日向ぼっこ日和だなー」


 今日もいつもの様に皆からの挨拶。

 至る所のキャッコ族の肉球からお日様の香り。

 あちらこちらではネト族の笑顔。



「うーん、素晴らしいだ」


 俺が転生してから約100年、ネトキャッコ村は10万人のネトキャッコ王国となっていた。

 

 領地を拡大、周辺の国を取り込みそしてキャッコ村とネト族以外は皆殺し……とはせずにそれ以外の種族の交配を禁じただけにとどめた。


 なーんか『ネトキャッコ族優遇反対!』とかほざいている奴がいたから睾丸爆発させたら黙ってくれた。


 というか優遇じゃなくネトキャッコ族と交わるなって言ってるだけなんだが。


 道中何回か反乱起こされたりネトキャッコ族が人間と子供作りたいとか言ってきて俺は涙を飲んでそれを認めたりした。

 人からネトキャッコ族への干渉は睾丸爆発だが逆はネトキャッコ族の意思を尊重して許すことにした。


 とはいえそれは一部のネトキャッコ族だけであり、大半はネトキャッコ族のみで繁栄して行った。



「おー、昨日よりも大きくなっているか?」


「そんなにすぐには変わらないですにゃ、この子もリョウ様に会えるの楽しみにしていますにゃ」


「……大丈夫ニャッスかね……」


 既にネト族とキャッコ族はその隔たりはなく、ネトキャッコ族という1つの種族になっていた。


 その中でも人間に近い姿の者、猫に近い姿の者が明白にわかれつつあった。


 妊娠しているのは人間に近いネトキャッコ族の女性、ククリャ、その側でウロウロしているのはほぼ二足歩行のネトキャッコ族のシャスニャス。


 2人から生まれる子どもはさぞ可愛かろう。


 猫だといいなー、と思いつつも元気ならそれでいいかなとも思っていた。


「ぐ、ぐぅっ!?」


「どうしたニャッス!?陣痛かニャッス!?」


 そろそろ産まれるそうだ。


「では俺は外で待っている、ククリャ、頑張るんだぞ」


「は、はい……ありがとうございます」


 母子健康であれば良い。

 俺はそう願い部屋を出た。


 ◇ ◇ ◇


 ちなみに、ネトキャッコ族の寿命は非常に短い。

 人間が大体この世界では60年だが、ネトキャッコは10年程。


 だから100年という間でも非常に多くのネトキャッコ族が生まれ、そして亡くなっていった。


 自己満であると理解しながら責任として死を見届けてはいたが、やはり別れは辛いものだった。


 俺の好意を非人道的と言いたいなら言えばいい、だが俺は辞める気は全くなかった。


「あー!リョウ様だー!」


 小さなネトキャッコ族の子供。

 少し前までは膝ほどだった身長が今は腰までに伸びていた。


「いつもまもってくれてありがとうございます!」


 ネトキャッコ族を救うという偽善の中、だがそんな中でも善は生まれている気がしたからだ。



 ま!暗いことはさておき、新しい命の誕生を祝おうではないか!!うん!!


「リョウ様!!大変シャッス!!」


 シャスニャスだ、どうかしたのだろうか?


「と、とにかく来るニャッス!」


 尋常では無い慌てようについていくとククリャのお産が終わったようだ。


 しかし皆とても静かにある一点を見つめていた。


 もしかして流産かと思ったが、違う。

 ククリャの手に抱かれた黒い


「ぴゃー、ぴゃーん」


「リョウ様、小さいけれど産まれましたにゃ……私とシャスニャスの子が」


「…………」


「シャスニャス、抱いてくださいにゃ」


「シ、シャッス」


 …………


「おお、小さいけれどかわい」


「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「にゃ!?」


 まだ濡れて完全ではないけどふんわりとした身体、小さなおてて、おひげにそしてぷにぷに肉球!


「…………あの、触ってもいいでしょうか?手は綺麗なんで!」


「何で敬語なんですにゃ?もちろんですにゃ」


「アダムとイブなんで……じゃあ、し、し、失礼して…………」


 ふにっ


「あひゃぁぁぁぁぁぁぁ!」


 猫様の肉球!


 ぷるっ


「おひょぉぉぉぉぉぉぉ!」


 猫様のお耳!


 ふわっ


「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


 猫様の香り!


「リョウ様!?どうされたんニャッス!?」


「この子を国宝に指定する、そして今からこの子が国王だ!!」


「正気に戻ってくださいにゃ!!」


 ククリャに思い切り猫パンチされた。


「私の子がかわいいのはわかりますけど落ち着くんですにゃ!」


「す、すまない……念願の猫だったもんで……」


「ぴゃーん、ぴぃー!」


 かわいー、じゃない。

 見ていると話が進まない。


「ククリャ、シャスニャス、産まれたばかりで申し訳ないのだが相談がある。その子の育児に俺も協力してもいいだろうか?」


「え!?リョウ様がですかにゃ?それは願ってもないですにゃが……」


「その代わり!もしその子が大きくなったらお願いしたいことがある!」


 ククリャは何かを察したのか神妙な顔になる。


「……はい、この子もそれが本望でしょう。わかりました、よろしくお願いしますにゃ」


「いいのか?」


「もちろんです、リョウ様がこの子を選んだのなら、になるのは当然ですから」


 …………………………妻?


「あ、いや……大きくなったら毎日一緒に住んで寝て欲しいなーって思っただけなんだけど」


「え?だからお願いしますにゃと言ったのですが……私も孫が見たいですにゃし……」


 あー、勘違いしてるな……


「ごめん、寝るって言うのはその特に手を出したりはしないて本当に添い寝するだけで一緒に住むのは正直下心は全く無くて、というかそんな気にはならなくて……」


 説明していけば行くほどククリャとシャスニャスの顔が曇って行く。


「ま、まぁリョウ様の考えは私達の理解を範囲を超えた難しいもですね……ですがリョウ様ならこの子を任せられます」


「俺もよくわからないシャッス、でもリョウ様なら信じられますニャッス。そうだ!折角だし名前をつけて貰うニャス!」


「え、いいの?」


「はい、お願いしますにゃ」


 それじゃ……


「ネコンで」


「ネコン……どんな意味があるんですにゃ?」


「意味というか俺の神様で、相棒で大切な奴の名前かな……ダメか?」


「そんなことないですにゃ!そんな名前頂けるなんてこの子、ネコンも本望ですにゃ!」


「ひゃー、ぴゅい」


 うん、そうだといいなぁ。

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