第2話 猫に過ぎたる宝無し

 魔術師の様なローブ、ベヒーモスを倒して作ったもふもふの杖。


 それから20年後、俺はある計画の為にある場所にいた。


 俺が転生して気づいたのはフォルド王国という国だった。


 周辺国とは争いもなく、人も資源も豊富、かなり平和な国で様々な種族が暮らしていた。


 実は俺はこの20年間、元の世界に戻る方法を探していた。

 だってそうだろう?それが一番手っ取り早く猫をもふもふできる方法なのだから。

 しかし、結論から言えば異世界転生の情報は猫よりも無く元の世界に戻るのは無理だと判明した。


 そして俺は更に異世界の猫の情報についてを集めた。


 転生して最初に会ったキャッコ族、街の外れに小さな集落を作っていたがあれには理由があったのだ。


 キャッコ族は異世界では

 理由はあの可愛い耳と尻尾。

 どうやらあれが世界を破滅に導いた魔物と同じらしい。

 そんな理由で迫害され、慎ましくもしかしキャッコ族はキャッコ族の誇りを持ちながら暮らしていたのだ。


 そしてキャッコ族の変遷、というかあの耳尻尾はどうやってああなったのかだ。


 可能性としては遺伝か突然変異、または進化の過程での変化だろうと考えていた。


 俺は国中の文献を調べ結論をだした。

 その結論は遺伝だった。


 過去に身体が、耳や手足、尻尾が猫の様な生物がいた、それが獰猛で強くかっこいいというキャッコ族の祖先だった。


 つまり確かにあの姿は遺伝ではあるがその祖先は猫ではない。


 だから何かしらの方法で祖先を蘇らせても現れるのは猫魚だと言うことだ。

 この事実に10年かけてたどり着いた俺は流石に心が折れた。


 だが、そこで俺はある考えを閃いたのだ。


 その為に


 更に調べていくと、猫に身体が一部似ているのはキャッコ族の他にネト族と言うのがいたことだ。


 ネト族は一言で言えば顔が猫、体はムキムキの人間だ。


 最初会った時は俺もかなりビビったが性格は皆通常時は温厚、しかし戦いとなるとその才能を発揮し、更に豹変し殺戮を繰り返すことから畏怖され多くの種族から距離を置かれていた。


 対するキャッコ族は世界を破滅に導いた魔物に似ている他に未来視とも言える程の第六感を持っていたことで気味悪がられていた。


 顔は猫のネト族。

 身体はほとんど猫のキャッコ族。


 ここまで言えばわかるのではないだろうか。


 そう、俺は2のだ。


 その為には迫害された2種族が安心して暮らせる場所を作らなくては行けない。

 その為のこの土地、そして村を作ると決めた。


 まずは2種族が住みやすい環境作りに何が必要かを考えてみた。

 調べていくと、キャッコ族もネト族も猫と共通する点が多く見られ、それをヒントに村を作れないかと考えた。


 その共通点1つ目は綺麗な水が必要なこと。


 綺麗な水がないとストレスになるらしく、ひっそりと暮らしつつも綺麗な水が湧き出る土地に集落を作っていた。


 2つ目はよく寝ることだ。


 大体15時間程寝るので、彼らがよく眠れるような日当たりの良い場所を選んだ。


 食事や身体が水で濡れると言うことに関して言うとほとんど人間と変わらず、食べられないものもほとんどなく、濡れることもさほど気にしていなかった。

 

 村を作る為にまずは水、湧き水があればいいがそれ以外に井戸を掘る必要があると思いたったのだが、何の力もない俺がそんなことできるはずもなく。


 だが、幸いにもネト族に力自慢がいた。


「よろしくお願いニャッス!!」


 キャッコ族が文化部系猫ならネト族は体育会系猫だろうな。


「リョウー、これはどうしたらいいんだにゃ?」


 キャッコ族は手が非常に器用で服や井戸のパーツ、罠などなど材料さえあれば何でも作ることが出来ていた。


 そんなキャッコ族のネト族の力を借りて1年足らずで村が完成した。

 そして20年で集めたキャッコ族とネト族の人数は何と村人も1万人を超え、かなりの村、というより街となった。


 あ、それと大事なことが1つ。

 この交配というのは非常に時間がかかる。

 既に俺の年齢は40歳、あと60年程で猫が生まれるわけはない。


「ということでこれを飲む」


 青と赤の液体。

 それを一気に飲み干すと身体がみるみる若返ってゆく。


「それなんだにゃ!?」


「若返り&不老不死の薬だ」


 どれくらいかかるかわからない、この程度は必要だろう。


 舞台は整った。


「よし、それじゃあ最後に俺が……はぁっ!!」


 この10年は猫キチとしてただ猫だけの事を考えていた訳ではない。

 俺は魔術師として大成していた。

 

 キャッコ族とネト族は迫害の対象だったのだが、それを救うべくそしてもう1つの理由から俺は防御魔術を完璧に習得していた。


 そうしてキャッコ族もネト族もそうして無傷でこの村に移住させることが出来たのだ。

 もう1つの理由は単純だ。

 ということだ。


 他種族の血が混じってしまえばそれまでの交配は水の泡になってしまうからな。


「くらえ……俺の編み出した最強結界!唯一神猫創造絶対防御結界クリエイトゴットキャットオブプロテクション!!」


 猫の肉球型の結界が村を包む、完全だ。


「リョウさん!この結果はどんな効果があるシャッス?」


「これか?これはキャッコ族とルト族以外で結界内に入った生物を爆死させる魔術だ」


「にゃ!?」

「シャッス!?」


 どうやらキャッコ族もネト族の皆も喜んでくれたようだ。

 そうだろう?自分達を迫害した奴ら、いや俺の猫様創造計画の邪魔は全て排除しなくてはいけないからな。


「リ、リョウ、そうなると僕達の食べる鶏とか牛とかも育てられないんじゃないかにゃ?」


「…………」


 確かに。

 それでは一部変更しよう。


「再びくらえ……俺の編み出した最強結界!唯一神猫創造絶対防御結界クリエイトゴットキャットオブプロテクション・改!!」


 再び肉球型の結界。


「……今度はどんな結界にゃ?」


「キャッコ族とネト族を妊娠させる能力のあるオスが入った場合そいつの睾丸が爆発する。当然キャッコ族とネト族、俺は例外だ」


「リョウさんすげえニャッス……」


 俺が対象外なのは運営上仕方ない。

 当然俺の血も混じらせることは絶対ない。


「さぁ!準備は出来た!村の爆誕を皆で祝うぞ!!」


「「「オーーー!!!」」」


「あ、村の名前は何にゃすか?」


 ……あ、考えてなかった。


「まー、ネトキャッコ村とかで!!」


「適当すぎるにゃ!!」


 まぁ、そんなこんなで。


 俺の野望の詰め込んだ村、ネトキャッコ村がここに完成した。

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