第3話 腕の筋肉取り替えたい。

教えて貰った迷宮前までついたのに全然入りたいと思はない。

だってさ...


「いや!こんなの俺は聞いてないんだけど!!!手のひらぐらいって言ってたじゃん!どー見ても俺の頭ぐらいあるんですけど〜!!!キメェーな!クソ!」


入る前に見えちゃったのだネタバレくらった。全然嬉しくない。


遠くから観たらちょうど扉ぐらいの大きさの土の塊あるなぁぐらいだったのにさ!近づいて中を覗いて後悔した。

覗いた瞬間目に広がるのはまばらに生えた木々と草、引くぐらい飛び回ってる俺の頭サイズの甲虫。

色々ツッコミたいんだけど...まぁ逆に冷静になってしまった。


「迷宮ってどうなってんかな?入り口はただのちっさい土の山、中を除けはウヨウヨいる虫と森。はぁ...つべこべ言ったって仕方ないのは分かってるだけどさぁ!!!!」


なんでこうもうまくいかないだろね?泣いてでも実家に寄生するのを選べばよかった。


「あぁ!もう!!!!なんとでもなれぇー!!!!」


と行き良いよく飛び込んだタイミングで甲虫がこちらに飛んでくる。確かに頭にしか飛んでこないんだけど...


「いや、遅くないか?頭打ちどころ悪くて弾けるような速度じゃないんだけど!」


あまりにも遅い!どれくらい遅いかと言うとハチミツの中飛んでんじゃないの?ってぐらい遅い。


「これ、さてはあれだな?デカくなって機動力落ちたな?ボーナスタイムじゃないか!!!!!」


あとはもう、作業だろう。

狂ったように棍棒を甲虫に振り下ろす、しっかり両手で棍棒を握りフルスイング。


「あー、最高。突っ立ってるだけでこっちに飛んでくるし、飛んできたら全身の体重乗っけて棍棒を振り下ろすだけ。命の危険なんて一つもない。」


調子良くブンブン棍棒を振り回す。もう何体の甲虫かっ飛ばしたのかも数えてない。でも、もうそろそろ終わりにしてもいいだろ。甲虫の数も減ってきてしまったし、今日だけでこのボーナスタイムを終わらせてしまってもよいものか...

なんて、油断してのうのうと怠惰を貪っていた自分をしばきたいと思う。


「ちょ、キモいキモいキモいキモい!!!!!!!!!!!」


前からあからさまに早い速度で飛んでくる今までのより少しだけ大きいソレ。 

まぁ、ちょっと早いぐらいなんともないからと思って棍棒を振り下ろした。

岩にフルスイングしたような手の痺れと痛みが残る。



「いやぁ〜!!!!!!!ムリ!!キモいただでさえでかいのに棍棒効かないのは反則!!!」


まぁ、後ろ振り返って出ればいいかと思って振り向くと、知らず知らずのうちに奥まで来ていたようで入り口までは走っても間に合わない。

そのことを自覚すると急に恐怖と絶望感に押しつぶされそうになる。当たりどこらが悪がれば死ぬ、骨が折れても明日からの金を稼げなくて死ぬ。まだ、美味い飯もいい家も何も経験してない。こんな所で死ぬ訳には...



「あぁ!!!やればいいんでしょう!やれば!あの受付嬢絶対許さん!!!!」


幸い、ちゃんと見てしっかり回避すれば大丈夫。当たれば死ぬただそれだけのことだ。

頭に飛んで来る甲虫にめがけて棍棒を振り下ろす。 

回避振る回避振る回避振る...どれだけそれを繰り返したのか、分からない。棍棒は砕けていないし相手も砕けていない、所々にヒビはできているもののもう俺の腕の感覚も手の感覚もない。


「はぁはぁ、手痛いしこの虫硬いし致命的な一撃も与えられない、俺は美味い飯食っていい所に住んでみたいだけなんだよぉぉぉお!!!!」


本気で振り抜いた棍棒が砕けるとともに、甲虫も紫色の体液を垂らしながら砕け散った。


「はぁはぁ、死ぬかと思った。手の感覚もなんもや...」



周りの状況を確認してドロップしたものをかき集めながら、震える手と足を落ち着かせる。


「あの、受付嬢!!!適当なとこ言いやがって!!!絶対苦情入れてやるぅぅぅぅう

!!!」

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冒険者は怠けて生きたい。 人型 @yushi0308

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