学園モノ乙女ゲームの世界に召喚された私は悪役令嬢の使い魔として奮闘します!

マリエラ・ゴールドバーグ

第1話

 そよそよと静かに風が吹く。そのたびに私と私に向き合う牧田先輩の髪が柔らかく揺れる。

 「と、突然呼び出してすみません。少しだけ二人で話したくて……」

 「うん、いいよ。部活のこと? 足技のバリエーションを増やしたいって言ってたよね」

 柔道部の三年生、牧田先輩が優しく微笑む。

 あぁ、大好きだ。

 「あ、えっと今日はその話じゃなくてですね……。なんというか、その……」

 私は入部当時から牧田先輩のことが好きだった。新入部員で右も左もわからない私にいつも優しく接してくれた。いつも気に掛けてくれた。普段はぱっちりしているのに笑うと細くなる目が好きだった。真面目でユーモアのある性格が好きだった。

 だから今日こそその気持ちを伝えたい。

 と思っているのだが、いざ本人を目の前にすると言葉にならない。舌がもつれて、心臓がうるさい。

 「その、私、ずっと前から先輩のことが!」

 意を決して先輩に告白しようとしたその瞬間。

 カッと私の足元が激しく光った。

 「なにこれ!?」

 「小川! こっち来い!」

 突然の怪奇現象に牧田先輩は大きく目を見開いて驚きつつもそう叫んだ。

 「先輩!」

 私は思わず牧田先輩に向かって手を伸ばした。先輩もそれに応えて手を伸ばしてくれる。

 しかし私は先輩の手を掴むことができなかった。手に触れる寸前、大きな静電気が発生したみたいにバチっと音を立てて弾かれてしまったからだ。

 それから光はますます燦然と輝きだした。眩しすぎて目を開けていられない。堪らず私はぎゅっと目を瞑った。

 数秒、いや数分程そうしていただろうか。瞼越しに光が落ち着いたのがわかったので私は恐る恐る目を開いた。

 「え……? どういうこと?」

 一番に目に飛び込んできたのは、気が強そうな超絶美少女だった。

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