第11話 お兄ちゃんはリアルでも最強でした


「んだてめぇ。オレはアニキとビジネスの話してんだよ。ガキは引っ込んでな」


「はいはい出た出た。よくいるんだよね。人気が出た途端にすり寄って、おこぼれに預かろうとする厚顔無恥な金魚のフンが」


「誰がウンコだ!」


「自分から言っちゃった。わ~、ばっちい」


「てめぇ……! 舐めた口聞いてるとミンチにすんぞ!」


「うわ、今の聞いた? 脅し文句が昭和すぎ。もっと語彙力を磨こうよ。国語辞典貸しましょうか? 小学生向けのやつ」


「決めた。てめぇはコロス! すぐコロス!」



 顔を真っ赤にした郡山がミコトに襲いかかる。

 マサトは咄嗟にミコトを庇い、郡山こおりやまの前に立ち塞がった。



「ミコトは下がってて」


「邪魔だクズ男! 先に死にてぇのか!」


「あはは。死ぬのはいやですね~」



 マサトは笑いながら郡山の攻撃を受け流した。

 右フックをスエーで避ける。ストレートを片手で払う。

 何度拳を繰り出しても、そのすべてを避けられてしまった。



「はぁはぁ……っ! て、てめぇ! ちょこまかと! 大人しくしやがれ!」


「いやですよ。当たったら痛いじゃないですか」


「うるせぇ! てめぇがひぃひぃ泣くところを見たいんだよ!」



 ぶち切れた郡山が突撃してくる。

 だが、足がフラついており真っ直ぐ前に進めない。


 マサトは郡山のスタミナ切れを待っていた。

 闘牛士のようにヒラリと突撃を回避して、トンと背中を押す。



「おつかれさまです」


「おわあぁっ!?」



 バランスを崩した郡山はその場で転倒。道路に顔から突っ込んだ。

 恐怖の対象だった不良が無様に転ぶ姿は滑稽そのものだ。



「先輩がバテてる今のうちだ。ミコト、早く行こう」


「え~? あんなのやっちゃいなよ。お兄ちゃんなら余裕でしょ」


「朝から無駄な体力を使いたくないんだよ」



 狐神の血は、マサトの身体能力を異常なほどに強化した。

 モンスター相手ならまだしも、並みの人間では歯が立たない。


 村でいじめられた時も、マサトから手を出すことはなかった。

 マサトが仕返しするとやり過ぎてしまうからだ。



「ほら、チャイムが鳴ってる。遅刻したらお母さんに報告するよ」


「ちぇー。命拾いしたねゴリ山パイセン」



 マサトとミコトは郡山を置いて一目散に立ち去る。

 一部始終を目撃していたギャラリーは、郡山に冷たい視線を向けた。



「すごい! あのゴリ山を倒したわ!」


「さすがはマサトきゅん! ザコは相手にならないわけね!」


「ぷっ。ゴリ山だっさ。返り討ちにあってやんの」


「いつもイキり散らかしてるからいい気味ね」


「見世物んじゃねぇぞゴラァ!!!」



 郡山は顔を真っ赤にして牙を剥くが、負け犬の遠吠えにしか聞こえない。



(くそくそくそっ……! アイツら、ぜってぇコロス……っ!!)



 プライドをズタズタにされた郡山は、葛乃葉くずのは兄妹に殺意を向ける。



「………………」



 膨れ上がる怒りと憎悪の感情。

 その心の闇を狙う何者かが、物陰からじっと彼を見つめていた……。




 ***




「ふぅ……。なんとか遅刻せずに間に合った」



 ミコトは1年生でマサトは2年生だ。

 昇降口で別れたあと、マサトが自分の教室に向かうと……。



「来たぞ! 葛乃葉だ。囲めっ!」


「うわっ!? なになに……っ!?」






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※作者コメントです

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 ここまでお読みくださりありがとうございます!

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(※平日8時。土日8時、12時更新の予定です)

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