第5話 颯爽とアイドル女騎士を助ける
「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!」
コメントがざわついていると、森の中から巨大な黒鬼が姿を現した。
顔にはドクロの仮面をかぶり、骨の装飾を施した錫杖を振り回している。
”なんだあの仮面のオーガ。あんなの見たことないんだけど”
”あいつはネクロオーガだ!”
”オーガシャーマンの上位種だ。複数の魔法スキルを操るレアモンスターだよ”
「
骸黒鬼、ネクロオーガとも呼ばれているその鬼は大柄のわりに技巧派で、感覚阻害系の呪術を使う。
呪術師が使役する
(呪術師は呪いと災いをまき散らす退魔師の天敵だ。放ってはおけない)
だが、退魔師と同じように呪術師もまた長いこと表社会に顔を出していない。
マサトも骸黒鬼を見るのは初めてだった。
(レアモンスター扱いなのも頷ける。どうして急に現われたんだろう)
知的好奇心が湧き上がり、呑気に観察を続けていると……。
「そこの少年、お逃げなさい……!」
森の中から水着の女騎士シルヴィアが飛び出してきた。
「
ネクロオーガは振り向きざまに
シルヴィアは動きを止め、その場に膝をついてしまう。
「くっ……!」
「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!」
シルヴィア目がけて振り下ろされる巨大な棍棒。
(まずい。また呪怨が放たれる前に倒さないと……!)
呑気に構えすぎた。いつもソロで潜るので対応が遅れてしまった。
ネクロオーガの注意はマサトから逸れている。
シルヴィアが作ってくれた
「ありがとう。あとは僕に任せて」
マサトは棍棒が振り下ろされるより早く印を結んで、地面に両手を突いた。
続けざまに【
「オン・シヴァルヴィ・ソワカ」
マサトが真言を唱えると、ネクロオーガの立っていた地面が陥没した。
バランスを崩して棍棒を空振りする。
「もういっちょ!」
追加の真言を唱える。
すると周囲の岩盤が盛り上がり、巨大な岩の手が出現。
――――ズゴォォォォォォンッ!!!
巨石による合掌で押しつぶされるネクロオーガ。
圧倒的な質量の前に小細工は通用しない。
断末魔をあげることなくネクロオーガは消滅した。
「ふぅ……。なんとかなったか」
一人だけなら攻撃を見てから回避余裕だったが、シルヴィアを護る必要があった。
だから、まず敵の体勢を崩して退魔術式【封印
覚醒したばかりで制御が上手くいくか不安だったが、無事に成功した。
「あ、あの……っ!」
「大丈夫だった? そんな格好のままだと風邪引くよ」
マサトは
それから怪我の様子を見る。
「怪我してるね。ちょっと待ってて」
マサトは印を結び、シルヴィアの体に向かって手の平をかざした。
「オン・バサラスーリ・ソワカ」
マサトが【
「心地よい光ですわ……。まるで日向ぼっこをしているかのような」
「
「回復魔法をお使いになられるのですか? ですが、さきほどは攻撃系の魔法を使っていたような」
「あはは。僕はヒトより器用なんだ」
ダンジョンで受けた傷は魔力=
だから
「これでよし。傷は塞がったと思うけど念のため医者に診せて。一人で帰れそう?」
「は、はい……」
「それじゃあ僕はこれで」
「待ってください! お礼がまだですわ」
「お礼が欲しくて助けたわけじゃない。キミだってそうでしょ?」
「え……?」
「二度も僕を助けてくれたじゃないか。正義のヒーローみたいで格好良かったよ」
「いやそんな……。ワタクシは無我夢中で……」
「無意識に体が動いたのならホンモノだよ」
マサトは心からの賛辞と笑顔を送る。
シルヴィアの行動は、弱き者を護ろうとする気高き騎士そのものだった。
「そろそろ時間だ。早く帰らないと」
「せめてお名前を……」
「僕は…………」
シルヴィアに呼び止められる。
そのときまだ撮影中だったことに気がついた。
「退魔師チャンネルの
マサトはラブピースを決めて締めの言葉を告げると、
***
……翌日。
マサトの退魔師チャンネルは鬼バズった。
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