第2話 電話

 午前2時の交差点。その交差点の中心に一人女性がいました。

 髪は足元まで伸びており、美しい黒色をしていました。肉付きの良い体格で、目は黄緑色に輝いており、顔を隠すように大きな黒い帽子をかぶっています。身長は172cm程度でしょうか。服は黒いワンピースのようなものを着ており、腹回りには服を締め付けるように布が巻かれていました。その為豊富な胸が更に強調されていました。

 この女性がいる街は日本の住宅街のような雰囲気です。二階程度の住宅が密集しています。

 彼女の頭上にある信号は赤色を示し、点滅していました。

 彼女はどこかへと歩いていました。カツカツという足音が静かな街に響き渡ります。

 彼女は何か銃のような物とナイフ1本を持っていました。



 彼女は一人佇む公衆電話に着きました。周りには人や動物はおろか、建物すら無い、ただただ暗い謎の空間でした。

 そしてその空間には彼女一人しか居ませんでした。

 彼女は受話器を手に取りました。

(今日はこの番号にしましょ)

 彼女は適当に番号を打ち込みました。しかし適当でも彼女が打ち込んだ番号は必ず存在している番号でしかも必ず繋がりました。

 彼女の耳に「ツー、ツー」という音が響きます。

 そしてその音が鳴り止みました。どうやら相手が電話に出たようです。

「はい、もしもし?」

 電話相手が話しました。男性のような声でした。

「もしもし、私メリーさん」

 彼女は自分のことを「メリーさん」と名乗りました。

「え?メリー………さん?悪戯電話ですか?」

「殺してほしい人、誰かな?」

「は?何を言っているんだ?殺してほしい人?」

「……」

 メリーさんは何も言わず、相手の返答を待ちました。

「……えっと………鈴木とかかな?けどこんな事教えて何になr……」

 メリーさんはガチャ、と電話を切りました。

 メリーさんは何も言いませんでした。

 (へぇ、鈴木……か…)

 メリーさんはニコッと不気味に笑いました。

 そしてメリーさんはどこかへと歩き始めました。メリーさんが歩いている方向、それは電話主と「鈴木」がいる方向でした。どうやって分かったのか、それは誰にもわかりません。

 メリーさんはそちらの方向にただただ歩いていきました。



 メリーさんは一つの家へと着きました。家はかなり小さく、一人暮らしのようでした。その家の表札には「鈴木」と書かれていました。

 メリーさんは鍵がかかっているその家にドアから入りました。鍵は閉まっているはずでした。

 その家に入るとすぐ右の部屋から音がします。どうやら1人目のターゲットはそこにいるようです。

 メリーさんは扉を少し開け、中の様子を確認しました。ターゲットはどうやらパソコンで何かの作業をしているようでした。

 メリーさんは扉を完全に開け、ターゲットの真後ろへと移動しました。

 ターゲットはそれに全く気づきませんでした。

 そしてメリーさんは囁きます。

「今、真後ろにいるの」

 ターゲットは「ん?」と言って後ろを振り返りました。そしてナイフを構えているメリーさんを見ました。

「う、うああああ!!!ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 ターゲットは椅子から落ちました。

 メリーさんは腰を抜かしたターゲットに近づき、こう言いました。

「嫌われるのが悪いんだよ」

 メリーさんはナイフを振り下ろしました。

 そのナイフはまずは肺を、その次は腸、その次に肝臓と相手にどんどん穴を開けていきました。

 ターゲットはもう息をしていませんでした。

 メリーさんはナイフに付いた血を指で拭き取り、その指を舐めました。

「………」

 メリーさんは黙ったままニコッと笑いました。

 メリーさんは死体をそのままにして、その家を出ました。




 メリーさんは次のターゲットである電話主のところまで来ました。ターゲットは住宅に囲まれた道を歩いていました。とても静かです。そんな静かな空間にコツコツというターゲットの足音が響きます。

(こんな時間に外を歩くなんて……とっても危ないよ?)

 メリーさんはその男を屋根の上から見ていました。

 メリーさんは銃を構えました。スコープも何もなく、少し窪んだだけの照準器で狙いをつけました。

 そしてメリーさんは銃の引き金を引きました。

 しかし、弾は出ず、音も出ませんでした。

 その代わりに銃から針が出てきました。

 毒針です。5分後程度に心臓発作を起こしたかのように殺せる物です。時間は調整できます。

 メリーさんが飛ばした毒針は見事ターゲットに命中しました。

(よし………)

 メリーさんはその場から離れました。


 5分後、電話主は自分の家の前で倒れました。




 メリーさんは道を歩きながら何かを書きまとめていました。何を書いているのかは分かりません。

(よし、今日の分は終わりっと)

 メリーさんはどこかに向かって歩きました。どこに向かっているかは誰にも分かりません。

 そしてメリーさんは消えました。


 こんな冷酷な殺し方をする。それが「メリーさん」です。

 メリーさんは毎晩血で染まった花を一輪ずつ咲かせて行きました。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


 次の日になりました。メリーさんは昼どこにいたかはわかりません。

 メリーさんはまたもやあの公衆電話に来ました。

 そしてメリーさんは昨日と同じようにどこかへと電話をかけました。

 電話は当然のように誰かへと繋がりました。

「もしもし、私メリーさん」

「……メリーさん……か……」

「殺してほしい人、誰かな?」

「………私を殺しに来い、他人に迷惑をかけr……」

 メリーさんは電話を切りました。

(中々自信満々の相手だねぇ……今日は戦うことになるかな?)

 メリーさんはターゲットとなった人の所へとゆっくり歩いていきました。

 何故ターゲットがいる方向が分かったのかは分かりません。




 メリーさんはターゲットがいる所に着きました。そこはまだ殆ど何もできていない工事現場でした。物や工具が散乱しており、元は建物があったのか建物の残骸などが散らばっています。

 その中にターゲットとなった男がいます。筋肉が豊富で身長は高く、白い服に黒いジーンズを着ていました。年齢は30歳程度でとても若いように見えました。

 メリーさんはターゲットに電話をしました。

「もしもし、私メリーさん、今私貴方と同じところにいるの」

「あぁ、そうか、それなら電話じゃなくて直接話せ」

「嫌だ」

「そうか」

 メリーさんはターゲットに向けて毒針を放ちました。

 殆ど音は出ませんでしたがターゲットはそれに気づきそれを避けました。

「貴方、名前は?」

 電話越しでメリーさんが聞きました。

「ニックだ」

「へぇ」

 メリーさんは電話を切りました。

(見る感じ明らかに一般人じゃないね、しかもあの毒針に気づくなんて……)

 メリーさんは気配を消してターゲットの真後ろまで近づきました。

 そしてニックの耳元で囁きました。

「もしもし、私メリーさん。今貴方の真後ろにいるの」

 それを言い終わるまでニックは動けれませんでした。金縛りというものです。

 メリーさんはナイフをニックに刺そうとしましたが寸前で避けられました。

「近づいてきたのに気づけない……どういうことだ?」

 ニックはそう言い、背中につけていた大きな刃物を取り出し、戦闘体制になりました。

 しかしナイフを刺そうとしていたメリーさんは既に消えていました。

「………?」

 メリーさんはニックの後ろにいました。

 ニックは驚いて後ろを向き、メリーさんの攻撃を刃物で受け止めました。

「本当にどういうことだ?」

 目の前にいたはずのメリーさんはもう既に消えていました。

「今さっき俺に攻撃したはずだよな?何故消えてる?」

 ニックに向かって毒針が放たれました。

 ニックはその攻撃を刃物を使い弾きました。

「おい、どこにいるんだ?」

 その時メリーさんから電話が来ました。

 ニックは電話に出る気はなかったのですが勝手に通話モードに切り替わりました。

「もしもし、私メリーさん」

「あぁ、どこにいるんだ?」

「今、貴方の目の前にいるの」

 ニックの目の前に突然メリーさんが現れました。

「!?」

 メリーさんはニックの目に目掛けてナイフを刺しました。

 ニックはそれに反応できませんでした。

「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 夜の暗闇の中に悲鳴が鳴り響きました。

 電話越しにメリーさんは言いました。

「さようなら」



 数分後、悲鳴を聞いて駆けつけた人は穴が大量に空いたターゲットの死体を見ました。


 メリーさんはナイフに付いた血を指で拭き取り、それを舐めました。

「………」

 メリーさんはまたもやニコッと笑いました。

 そしてメリーさんは何やらまた何かを書きまとめていました。何を書いているのかは本当に分かりません。

(ま、所詮実力はあれ程度よね)

 メリーさんはまたどこかへと歩いて行きました。

 次に電話がなる家は何処なのか、それはメリーさんにも私達にも分かりませんでした。


 △△△


 俺は元スパイのかなり特殊な人間だ。

 ん?お前は誰だ、だって?

 わかった。じゃぁまずは俺が誰なのか話そう。

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