姫さまは、歌いたい⑤
ワタクシ、ヒト型になれたことを一瞬でも喜んでしまった自分を恨めしく思います。
ワタクシ、これでも、一応、姫さまよりも長く生きているのですよ。年長者なのですよ。
そして、一応と言いますか、地での言い方をするのであれば、ワタクシ、オスなのですよ。雄です。♂です。
そ、そ、そ、
それが、なにゆえ、
しかも、姫さまよりも、幼く見えます。
どういうことでしょう。
震えが止まりません。
ああ、
湯あみのために服を脱いだからでしょうか。
風邪を引くといけません。この軟弱そうな体で風邪を引いてしまっては、これから始まる地での姫さまの生活をお支えすることができなくなります。それでは、いけません。
ワタクシが、しっかりしなければ。
ワタクシが、姫さまをお支えするのです。
そう、ワタクシは、姫さま直々に乞われて地へと共に参ったのですから。
ぶくぶくぶく
汗が引いて少し寒気を感じた身体を温めるため、ワタクシは、湯船に貯められた温かなお湯の中へと、幼く 女体化した身体を沈めました。
どうして、こうなったのでしょう。
体が温められていきます。
これから、どうしていきましょう。
考えても仕方がないことなのかもしれません。
姫さま自身が望まれて地へ降りてしまったとは。
ワタクシにできることと言えば、姫さまが『禁忌』を侵すことのないよう、目を離さないでいるということなのでしょうか。
ああ、
だから、そのために。ワタクシは、このような身体にされてしまったのですね、きっと。
そう、思うことに致します。
出なければ、耐えられそうにありません。
ぶくぶくぶく
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