姫さまは、名付けたい①

 気が付くと、ワタクシは、ふかふかの布団にくるまれておりました。

「あら、気付いたのね」

 姫さまの声が致します。


 姫さま、ワタクシは、悪い夢でも見ていたのでしょうか。

 姫さまが自らへと降りていき、お供のワタクシはヒト型となり。

 姫さまよりよわい幼き女子おなごになったワタクシ。


 寝かせられた布団の心地よさ。

 見慣れぬ天井。

 聞こえてくる葉擦れの音。

 そして、みかどの歌声。

 これは、満月フルムーンの曲ですね。

 あ、

 ここは、右足を蹴って、軽く跳んで。


 はっ。

 曲を聞いただけで振りが分かるほどとは。

 ワタクシ、毒されてしまったのでしょうか。


「あなた、かわいいわね」

 姫さまは、にこやかに、ワタクシの姿を確認されます。


「あなたは、凜玖りんくよ」


 ですから、姫さま。お願いですから、結論だけを唐突に述べられるのは。

 ワタクシ、少し戸惑いますよ。


「わたくしは、望珠姫みずき


 ですから、姫さま、説明を。


仮名かりなよ」

 ああ、なるほど。

で生活していくのに、必要でしょう」

 たしかに。

 そうですね。

 

「あなたは、

 凜玖りんくは、わたくしの従妹いとこってことにしておきますからね」

 姫さまの親族という扱いなのですね。承知しました。


「さぁ、行くわよ」

 ですから、どこに。


 ちょっと、姫さま、待ってください。




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