姫さまは、語りたい②

「次に、輝夜かくや。いつも、帝のそばに居る人よ。あかだけど、控えめなの。

 みかど輝夜かぐや。この二人が、満月フルムーンのツートップ、なんて言われているけれど。輝夜かぐやは、『トップのみかど以外は、みんな同じだよ』って、言うの。自分はあくまでみかどを支えるがわだって。何か、主従関係みたいでしょ、この二人……」


 姫さまの手がぎゅっと握られました。

 頬が紅潮しております。

 口の形が『みかど』とささやいているようです。


 姫さま、ここは、自室ですよ。目の前にみかどはおりません。

 ワタクシが気絶してしまったばかりに、姫さまは、早々にあの箱のような建物の中からワタクシを連れ出し、月へと還ってきたのです。

 姫さまの自室に連れていかれるまでの道中で、「ライブの途中だったのに」との姫さまのつぶやきを耳にしたような気がするのですが。申し訳ありません。ワタクシにはその意味が解せないのであります。

 「らいぶ」とは?

 ワタクシには、初めて耳にする単語ばかりです。


「それから、月兎つきと

 五人の中では一番小柄で。身軽で」


 ああ、あの人ですね。一番身軽に飛び跳ねていた人ですね。


「月のうさぎって名前なんだけど」

 ちらり、と。姫さまの視線が、ワタクシに刺さります。

「……」

 姫さま、何か言いたげな表情であからさまな溜息をつくのは、やめていただけませんか。ワタクシ なんだか、いたたまれない気持ちになってきました。

 





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