姫さまは、出かけたい⑤

「なぁんで、あんなところに いたのかしらねぇ」


 姫さまの少ぉし意地の悪い声で目を覚ましました。


 あぁ、申し訳ありません。


 ワタクシ、まばゆい光に 目がくらんだのでございます。

 大音量に 気が遠くなってしまったのでございます。


 うっ……


 まだ、頭に響いております。キぃンキぃンと女子おなご達の歓声が、ワタクシをつんざくのでございます。


『ふうん。それで?』

 と、もの言いたげな姫さまの視線に、ワタクシ いたたまれません。


 此度こたびは姫さまに内緒であとをつけてきたのですから。本来は、姫さまに見つかっては ならぬのです。

 それなのに、

 姫さまに見つけていただかなければ、ワタクシは野良ウサギとして保護されてしまうところだったのですね。

 スミマセン

 スミマセン

 スミマセン


 

 姫さまが「おしのび」で出掛けられた先が気になったのもですから。

 姫さま、嬉々として出掛けられたではありませんか。それも、へ!

 

 姫さまにお仕えする身と致しましては、姫さまの安否を確認しなくてはなりません故……。

 姫さまに気付かれぬよう、気配を消して後を追ったつもりでしたが。ワタクシが未熟でございました。姫さまにはかないません。


 まことに、申し訳ございません。


 はい。

 わたくしの独断でございます。

 奥方様達には何も告げておりませぬ。

 

 ですから、どうか、このまま

 ご内密に……





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