姫さまは、出かけたい➂

 うおおおおおおーーー

 きゃあああああーーー


 人の声とは、このようにうなったりさけんだりもするものなのですね。ワタクシ初めて知りました。恐ろしいものです。

 低い声は、まるで地を這うように響いてきます。

 高い声は、耳をつんざくかのようです。痛いです。

 一体どこから出ているのでしょう。不思議でなりません。


 うさぎは、ニンゲンよりも耳がよいのですよ。この空間は耐えられません。

 しかし、姫さまの気配は、確かにこの空間にあるのです。


 あ、

 姫さま!


 いつもとは違うお召し物でいらしても、その気配は変わりません。長年、姫さまに仕えてきたワタクシは、姫さまの気配を間違えません。

 例え、先ほどとは違う装いでいらしても。


 まぁ……

 あんなに はしゃいでおられる姫さまの姿、はじめて見ました。


 姫さま、何を叫んでいらっしゃるのでしょうか。

 姫さま、誰に向かって微笑んでいらっしゃるのでしょうか。

 姫さま、その手に持った丸くて平たい物は何でしょうか。

 姫さま、光がまぶしゅうございます。

 

 ちかちかと、色の付いた光の棒が、あちらも、こちらにも。姫さまの手元にも。


 かような箱のような空間に閉じ込められて、

 女子おなご達は何をそんなにさわいでいるのでしょうか。






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