第16話 殺人の定義を述べよ
ずっと気になっていた事がある。
俺はダンジョン一層で落とし穴に落ち、ヴィオラの上に落下した。
アイラはマッピング中にマッドハウスの光の壁に道を阻まれた。
ヴィオラは仲間に胸を刺された。
この三つはどの順番で発生したのか。
あるいは同時に発生したのか。
まず仮定その一だ。
マッドハウスはヴィオラが刺され殺されたことによって発生し、同時にマッドハウスが発生した。
そう考えて探索していた。
でも、俺がヴィオラの上に落ちた時、この男を含めて誰も側にいなかったと思うんだよな。
俺は少し時間をおいて、イレギュラーな事象としてマッドハウスの中に落ちたのか?
マッドハウスって閉鎖空間じゃないのか?
教科書にはマッドハウスは、出れない入れないって書いてあったぞ。
ついでに。
ヴィオラが
ダンジョンにおける殺人の定義とは何だ?
俺が気になっている仮定その二がある。
ヴィオラが殺されたことと、マッドハウスは無関係であると考えてみよう。
まず早めの昼ご飯の後、ヴィオラが刺され活動停止になった。
しかし、ヴィオラは
当然マッドハウスも発生しない。
ここまではオッケー。
その後14時14分にマッドハウスが発生した。
俺は発生とほぼ同時に落とし穴に落ち、ヴィオラの上に落下した。
これもオッケー。
つまり14時14分、ダンジョンのどこかで殺人が起き、マッドハウスが発生した。
……どこかでって、どこだ?
「……で、ボボンが俺の干し肉を一切れ持っていった。
昼飯を終えてこれからどうするかの話し合いになった」
「続けて」
デニスの尋問はアイラが引き継いでいた。
「ジルは一旦戻ることを主張した。
俺も
ボボンはもう少し狩りがしたいと言った。
ヴィオラはもっと奥に、もう一層潜ることを主張した」
「二対二ね。意見が割れた時はリーダーに従うのが普通のパーティーのルールよね」
アイラが言った。
「ヴィオラはここで帰る訳にはいかない。
断固潜ると言って。
なんていうか、ヴィオラはすごく苛ついてたんだ。
でもジルは帰ることを主張した。
こっちも譲らなかった」
「そして?」
アイラは続きを促す。
「ジルは立ち上がって一人でも帰るって言いだして、ヴィオラが追いかけて、、」
「それで?」
「ヴィオラが勝手に帰るなら血を一滴置いてけとか言い出して、、」
新ネタが出てきた。
血を一滴置いてけ。
俺はため息をついた。
「続きは?」
「ジルはいきなりナイフを抜いてヴィオラの胸にグサッと」
「あなたはジルを止めなかったの?」
「いきなりだったんだ!
そ、その時の俺はボボンとこれからどうするか話をしていた。
二対二じゃ話がまとまらないし」
四人でダンジョンに潜って女二人が喧嘩をはじめて、あげく刃傷沙汰か。
この
「その後はどうなったの?」
「ジルをヴィオラとナイフから引き剥がして、ともかく一旦戻ろうってことになって、帰る途中で落とし穴に落ちた。
脱出しようとしたら、ジルが落ちて怪我をしてた。
今、ジルは治癒術をかけながら寝てる。
ジルが回復したらもう一度脱出をためすつもりだった」
「そこに私達が現れたと?」
「そうだ」
「リーダーはデニス、あなたなのよね?」
「リ、リーダーと言うほどじゃないぞ。
臨時というか一応だ。
ともかく残りの二人を助けてくれ。
えと、あとジルは冒険者組合のおえらいさんの血縁らしいんだ」
ジルは冒険者組合のおえらいさんの血縁。
またまた新ネタだ。
デニスはイレギュラーな二人の冒険者、『
「ヴィオラ」
僕は隣のヴィオラに話しかける。
「なんですか」
「俺はダンジョンを出るまではヴィオラの味方だ。
俺はヴィオラを下敷きにして怪我なく済んだんだ」
「本当ですか!エド様!!」
「あーと、俺はマッドハウスが解除されたらダンジョンからなるべく早く出るつもりだ。
約束できるのはそれまでだけど」
「ちェッ。……でも、ありがとう。エド様」
ヴィオラは小さく言った。
デニスは冒険者組合のおえらいさんの血縁であるジルの味方をするようだ。
だったら、ヴィオラを下敷きにして助かった俺は、たとえ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます