第2話【国防戦略級魔法師・英崎達也】

スカウトに与えられた力によって達也の中で力が芽吹いた。

それは、今までの経験がそのまま実力に直結したということ。

今ここで、英崎達也が真の実力へと至った。


「これが、レベルアップ…………」

「そうです。実感がありますか? 自分が強くなった…………いえ、最適化されたという実感が」

「ウーン、想像以上だね…………君は本当に神のようだ」

「そう言っていただけると幸いです」


達也はこうも考えていた。自分以外の仲間はいるのだろうか、と。


「その学校、僕以外にも反逆者はいるのかい?」

「ええ。しかし上級生は既に屈服していると考えていいでしょう。稀にいる最強を除いて」

「なるほどね。………魔法を使っても良さそうだ」

「貴方の魔法は戦略級国防兵器に分類されていますが、その辺はいいのですか?」

「多分大丈夫だよ」


そう言って達也はスマホを取り出し、ある人物に電話をかける。


「あ、権藤さんですか? この前言われた魔法科高校への進学、実行しますので。あー、はい。天成高校です…………えっ、何言ってんですか、僕に対して心配は不要です。ただ、戦略級魔法の発動許可を」


相手がしばらく考えた後、許可が下りたのだろう。


「ありがとうございます。それでは、戦略級魔法師英崎達也、魔法科高校への潜入任務へ従事します」


電話を切ると達也は悪い笑みを見せた。


「今のお相手は?」

「魔法軍の准将だよ。任務という理由をつけて魔法科に入学する」

「魔法科ですか? 天成高校の魔法科はエルフなどの生来魔法族(マジックユーザー)が多く倍率も高いですが…………いや、最強に言うことではありませんね」


そう、英崎達也の魔法【分解】は最強の兵器。

彼の前ではあらゆる力も無と同じ。

だからこそ彼は日常での魔法発動を右手のみに制限している。

現在は右手で触れたものを効果対象とするのだが、本来は視界にあるもの全てを対象とする。

無機物有機物、魔法、超能力すべてを原子レベルに分解する力。

それを反転させることも可能。核分裂、核融合をも操る。


「ああ、僕は負けない。………負けるわけにはいかないんだ」

「何か理由でも?」

「…………私情だよ」

「そうですか。ではこれからは同志として、よろしくお願いいたします」

「ああ、よろしく」


互いに握手を交わす。

その瞬間達也の目に映ったスカウトは黒いボロボロのローブを着た【神】としての姿だった。

しかしこの神がまともな神であるのかと疑ってしまう。

当然だろう、黒いオーラを放ちながら金の眼光を持つ者など神と言えるか。


悪魔に近い神、それがスカウトであると、達也は結論付けた。


(しかし受験か…………)


「私の推薦で貴方の入学は確定しているのでご心配なく」


達也の考えをまた読み、スカウトは答えて見せた。

もう笑うしかなかった。


「何故君が推薦できるのかは聞かないでおくよ」

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解放の力がレベルアップだった件 ronboruto/乙川せつ @ronboruto

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