弓道部()

結局略奪は午前六時半まで続いた。


俺としたことが少し夢中になりすぎた。

しかし、その甲斐もあって二階層にあった棺は大方調べつくした。

そして三階層につながるであろう階段も見つけた。


大成果ではなかろうか!!!


ちなみに持ってきた鞄はパンパン、ポケットもパンパン、なんなら背負っている矢筒の中までギッシリアイテムまみれだ。

正直クソ重い。



とはいえ予定していた時間は過ぎてしまっているので、見つからないようにそそくさと帰ることにする。


あばよスケルトンダンジョン(仮称)もう会うことはないかもしれない!!!



***********



ダンジョンの門から出て、覆いかぶさっているブルーシートの隙間からこっそりと抜け出す。

どうやら周囲に人はいないようだ。


外に隠しておいた弓とバットも忘れず回収する。


工事現場から出て、外から眺める。


昨日今日のことだったが、最初の方はもうずいぶんと遠い思い出だ。

後で日記にでも書いておこう。じゃないと絶対に忘れる。


少しの間ぼーっとしていたら、工事現場の方から何やら物音がした。

音の方向を向くと、人が見えた。どうやら作業員の方が来たみたいだ。



「おはようございます。」

怪しまれないように挨拶する。


「おはよう、朝早いね。」


目線は自分の方を向いている。

まあ、こんな弓をむき出しで持ってたら誰だって注目する。


「はい、朝の部活の帰りなんです。弓をやってまして。」

もちろん嘘だ。弓を習っていたらダンジョンであんなに苦労しなかった。

弓を見せながら、バットに気付かれないことを願う。明らかにおかしい。


「ここの工事ってどれくらいで終わりそうですか?」

ついでに気になったことを聞いてみた。


「ああ、本当はあと数週間で終わる予定だったんだが、昨日の地震で色々あったらしくってね、ここは後回しになったんだ。急に駅の方を工事してくれって言われてね。」

「だから今も道具を取りに来ただけなんだ。再開も終了も未定だね。」


駅の方で何かあったんだろうか?わざわざ他の場所の業者を呼んでまで?


というか、今の話からして、ここから道具を持ってすぐに駅に行くらしい。




もしかするとここのダンジョン、しばらく見つからないのでは?




ブルーシートで隠した自分を内心で褒めながら、会話を切り上げ、家に向かう。


心なしか、重いはずの足取りが軽く感じる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る