第十三話 カリアスは肉体派
カリアス・テオバルトは、ロドリゲス公爵家の護衛騎士団の寮へと到着した。
「立派なもんだな」
感心したように呟き、建物を見上げた。
彼の茶色の瞳に映ったのは、丈夫そうな四階建ての寮だ。
「護衛騎士団の連中は、力が強いですからね。丈夫な建物に入れておかないと、すぐに物を壊すのですよ」
「そうなんですか」
騎士団長から説明を受けながら、カリアスは馬から降りた。
「馬は、こちらでお預かりします」
「あ。いえ、自分で連れていきますよ」
先に馬から降りていた騎士団長が、馬の
騎士団長は戸惑い気味に言う。
「いやそれでは……」
「オレには財産なんてものはないけど、コイツは大事な宝物であり相棒なんですよ。コイツがこれから住む場所を確認するのも、オレの大事な役割です」
「それはよい心がけですが……カリアスさまは、いずれこの屋敷の主となる方です。雑用は、私たちにお任せくださってもよいのですよ?」
騎士団長の言葉を、カリアスは豪快に笑い飛ばした。
「ハハハッ。主人は、アイーダさまでしょ? オレはお飾りの婚約者なんで、いつ追い出されるか分からない身の上ですよ」
「でも……」
「しがない伯爵家の三男坊なんで、甘やかさないでください。いつでも現役復帰できるようにしておきたいので、お願いします」
「はぁ……そうですか」
カリアスの愛想はよいが譲る気のない様子を見て、騎士団長は渋々といった風に引き下がった。
「
厩を見たカリアスは感嘆の声を上げた。
「はい。騎士団にとって馬は大事ですからね。ロドリゲス公爵家では、厩の管理もしっかりしていますのでご安心ください」
「だって。クロ、よかったな」
そう言いながらカリアスは、馬の背中を撫でた。
クロと呼ばれた馬も、嬉しそうに声を上げ、ブルブルッと体を震わせた。
「しかし、本当によいのですか? 護衛騎士団の寮へ住むというのは、異例のことですが」
騎士団長は不安そうに聞いた。
「大丈夫です。事前にロドリゲス公爵さまには許可を得ていますし。そもそもオレみたいなのに文官みたいな真似はできません。だったら、自分の特技を活かして役に立てる道を探るのが一番です」
「それならばよろしいですけれど……」
騎士団長は困ったように眉尻を下げた。
いずれ屋敷の主になるであろうカリアスを、団員の1人として迎え入れるのは、彼にとっては不本意なことだ。
扱いを間違えたらとんでもないことになるぞ、という危機感がある。
それと同時に、カリアスという男の魅力に惹かれてもいた。
騎士団長は現状に不満があるわけでない。
それでも変化というものは、面倒だと思う一方で、人をワクワクさせる何かがある。
(公爵家にこの方が入られたら……色々と変わるかもしれない)
カリアスの立派な体を眺めながら、騎士団長は新たなる風への期待に胸を膨らませた。
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