春が青くなる瞬間

🪻夕凪百合🪻

青春

「……早く来ないかなぁ」


 修学旅行の帰り道、俺はバス停にて家に帰るためのバスを待っていた。隣には好きな……いや好きだった人の友達――原多。


 数分前、隣にいる彼女から言われた「松平って頼りになるね~」なんていう、深い意味なんてない、たった10文字の言葉だけが俺の脳裏を支配していた。


 数分たち、そろそろバスが来るかなと思ったとき、不意に遠くから人が近づいてくるのが見えた。眼鏡と長身が特徴的な男――米岡だ。


「お!松平やん」


 呼び掛けられたので彼の方に向かおうとしたその時――。


「――行かないで、ここにいよ……」


 そんな耳を疑う言葉が聞こえた時、原多が俺の服を引っ張る。その瞬間、心拍数が急上昇しているのを実感する。ドキッと震える心と背中に感じる手の感覚だけが時が止まったように俺の脳を満たしていた。


 ――その瞬間、俺にも青い春がやって来たんだなと、そんな気持ちになった。

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春が青くなる瞬間 🪻夕凪百合🪻 @kuroyuri0519

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