第4話
「人の名前には願いがこもっているんだ。その子にどんな人生を歩んでほしいのか、たくさんの願いを込めて付けるんだと思う」
私がその話を聞いたのは、
この地域は外国人のシングルマザーも多い。都内に出稼ぎに来て、夜のお店で勤めているうちにそういう関係を持って、そして日本人の男に捨てられる。でも仕事は変えられない。夜職を続けないといけないから、夜、仕事に出る前に子どもを『たいようのいえ』に預けて、二日後の朝の仕事終わりに迎えに来る。そんな家族がいくつかあったから、『たいようのいえ』には色んな名前の子どもたちが生活していた。
「テディくん」と呼ばれている子がいた。
「愛」と書いて「テディ」と読む。これが本名だった。日本では名前に使う漢字は制限されているけど、読み方は無制限だから、どんな読み方であっても問題ない。初めて聞いた時はかわいい音の名前だな、くらいに私は思っていたけど、周りの子たちからすると、イジメの格好のネタだったらしい。
「変な名前だよなー。ハカセでもこんな名前、知らないよな」
周囲の子どもたちは悪意なく、今日もボランティアに来ていた
そんな話を向けられた大樹は、いつもと変わらない調子で、彼らに話し始めた。
「いいかい。人の名前には願いがこもっているんだ。その子にどんな人生を歩んでほしいのか、たくさんの願いを込めて付けるんだと、僕は思う。だから、人の名前をそんな風に、馬鹿にするようなことを言ってはいけないんだ」
この声は不思議と、ものすごく重たい
「それにね、名前っていうのは、世界と自分を繋ぐ魔法なんだ。みんなは僕のことなんか知らなかったけど、タイキ、って僕のことをみんなが呼んでくれた時から、僕は君たちと友達になれたでしょ。相手がどんな人でも、知らないものでも、まずは名前を知っていくことで、世界と繋がっていくことができるんだよ。名前はね、僕たち全員が持ってる魔法なんだ」
昔、私は「
光が何なのか、その正体は、みんな知らない。
それが何だかすごく不安だった。それでも大樹が言ってた通り、この名前にも誰かの願いがこもっているなら、それが何なのか、いつかママに聞いてみようと思った。そうしたら少し前向きになれる気がした。中学校に入る頃には、自分の名前がずいぶん好きになっていた。
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