1.
姉さんは我が家の中心だった。
当たり前だけど、僕は生まれてからずっと姉さんと一緒だった。一緒に寝て、一緒にご飯を食べて、一緒に育ってきた。母さんは「アンタが泣くと姉さんがいつもすぐあやしてくれたのよ。なんで泣いてるかなんて分かってないんだろうけど、本能なのかしらね。一生懸命アンタのこと
僕がまだ四歳にもならない頃に、姉さんは独りで外に出てしまったことがある。父さんも母さんも、そんなことをする子だとは思っておらず、まず家中を探し回った。どうやら家の中には居ないと思い至った二人は、寝かしつけた僕の世話をおばあちゃんに任せて、
父さんは車を出して、国道沿いの道をぐるりと回った。母さんは半ベソで自転車を漕ぎながら、
僕と同い年の息子さんがいて、たびたび交流があったご近所さんの橋下さんの家も訪ねたらしく、今でも橋下さんのお母さんからは、その必死な様子を笑い話にされている。
「笑い話になった」と書いた通り、この話はこのあと、あっさりと解決した。夜までかけて姉さんを探し回った父さんと母さんは、
さて、当の姉さんはというと、僕の
僕はこのドングリがいたく気に入って、寝ても覚めても握りしめていたそうだ。その様子を見た父さんが、そのドングリに
姉さんが亡くなった今、姉さんが持っていたストラップは僕が持っている。僕のストラップは火葬場で姉さんと一緒に焼いてもらった。姉さんのストラップをもらう代わりに、僕のストラップを持っていってほしかったからだ。後で父さんにその話をしたら「ずるいぞ」と言われた。父さんのドングリは、民宿のマスターキーに今もぶら下がっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます