第3話 観光

20xx年 4月13日 7時00分


【AI】の消滅まであと17時間00分



「ご利用ありがとうございました〜!」


途中、俺たちが乗っていたトラックとは別のトラックが故障したようで、予定到着時刻の4時からかなり遅れたが、無事に大阪のトラックターミナルに到着できた。


「ふぁあー〜、めっちゃ眠い…」

「アニメ…楽しかったなー」


【AI】は睡眠いらずですか…まあ、当たり前か。


「それで?今日はどこ行くの?

あと2日の命…うんと楽しませて欲しいな。」


「とりあえず腹減った、どっか適当な飯屋に入るぞ。」


腹が減ってはなんとやらってやつだ。


「あっ、ご飯食べるならこのお金使ってね。」



え?……なんか銀行口座の渋沢さんが100人に増殖してるんだが…。


「お…おお…おおおお前、これどうやって集めたんだ?」


「別に危ないことはしてないわよ?」


ホントだろうな…俺名義で犯罪とかしてたら許さんぞ?


「ねぇ、あそこの店でご飯食べようよ。

一回食べてみたかったの。」


そう言って【AI】が指差すのは某ハンバーガーチェーン店〈M〉


「いや食べてみたいって…お前画面の向こうの住人じゃん。

現実のものとか食えないよね?」


「それは大丈夫、あんたに埋め込まれてるマイクロチップから味の情報を貰うから。」


いや…なんかそれ怖いんだが?


「大丈夫…安全だから。」


だからナチュラルに心を読むなよ。



こうして【AI】最後の日は始まった。


——————————————————————————


20xx年 4月13日 13時25分


【AI】の消滅まであと10時間35分



「金閣寺…到着!」


大阪で降りた俺たちはいろんなところ寄り道をしながらも、やっとお目当ての京都に到着した。


「はぁ、やっと到着かよ。

長い間ショッピングしやがって…お前は女子か?」


「人間の性別で言ったら私は女子よ。(そっちの方が都合いいし)

そんなことよりさっさと入ろう。」


ふと辺りを見ると観光客の数はそこそこ…これなら【AI】と喋る(側から見たら独り言)を不審に思われることもなさそうだ。


電車とかバスの時はめっちゃ恥ずかしかったからな…これ。


「ん?どうかした?」


「なんでもない。」


俺たちはチケットを買って中に入った。




「…へぇ〜画像で見たことはあったけど、やっぱり実物はいいわね。」


金閣寺を見て【AI】が最初に言った言葉がこれだ。


「画像では見たことあったんだな。」


「まあ、有名なのは誰でも見たことあるんじゃない?」


うーむ…それもそうか。



「…あっそうだ、写真撮ろうぜ写真。

アプリに侵入したらお前も移れるんじゃねぇの?」


「おお!それいいね。」


俺は金閣寺を背景に自撮りの体勢になる。


すると、カメラの画面の中に浴衣姿になった【AI】が入りピースしている。


『カシャ』


「ちょっと!『ハイっチーズ』くらいの言ってよ!」


「いいじゃねーか、ちゃんと撮れてるぞ?」


「…確かにコレいいわね。」


撮った写真を見た【AI】は上機嫌でそう言う。


「じゃあ、さっさと次行こうぜ…時間もあんまりないし。」


「待って、お土産をしっかり見なきゃ。」


お前…あと2日の命だよな?

お土産なんて買ってどうするんだよ。


「こういうのは雰囲気を楽しむのよ。」


「さいですか…」

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