第3話


 素敵な宣戦布告した翌日の朝。

 召喚された勇者達に対して朝食後から早速、戦う為の訓練が始まった。

 綺麗に整列された勇者達の前に1人の鎧に身を包んだ偉丈夫が立った。

 偉丈夫は勇者達へ向けて自己紹介を始めた。


 「君達の志願を神に代わって感謝する!私は聖神騎士団で団長を務めるラルフ・ロンギヌスだ。さて、早速だが君達の訓練を始める」


 神からチートという加護を得たとしても、基本的には平和な日本で平穏に生きて来たのだ。

 いきなり、実戦に投入してしまえば無駄な死しか残らない。

 そうならない為に、教皇……シメオン・リヌスは勇者達が実戦でも使い物になる様に訓練させる事を選んだ。

 だが、そうは言っても先ずは召喚されし勇者達がどの様な加護を受けたのか?

 確認する必要があった。

 その為……


 「だが、始める前に先ずは君達がウルスラ様から賜った加護を知らなければならない。既に君達には銀色のプレートと針が配られていると思うが……無い者は居るかな?居たら、直ぐに挙手して教えてくれ!」


 先ずはステータスの確認をする必要があった。

 ステータスが解るファンタジーはゲーム以外では初めてであった3人は、少しだけ。

 少しだけ異世界に来たんだなぁ……と、何処か他人事の様に感心してしまう。

 他は異世界モノのお約束に興奮していた。

 そんな勇者達に対し、騎士団長であるラルフ・ロンギヌスは指示を下す。


 「君達に配られたプレートへ一緒に渡した針で指先を刺して、血を垂らすんだ!そうすれば、君達の現段階に於けるステータスと与えられた加護と適性職が解る!」


 その言葉と共に皆は指先を針でチクッと刺すと、銀色のプレートに血を一滴垂らしていく。

 すると、ラルフ・ロンギヌスの言葉通り。

 銀色のプレートにステータスと与えられた加護。

 それと、天職とも言える適性のある職が顕わとなった。

 顕わとなったステータスと加護、天職を見た涼子は自分のソレに呆れてしまう。


 「ふーん……コレが正確に私のステータスだと言うなら、凄いわね」


 そう眉をしかめてボヤくと、涼子のクラスメイトで友人でもある加藤かとう 美嘉みかが共通の友人でもある三島みしま 明日香あすかと共に見に来た。


 「ヤクちゃんのステータスどんな感じ?」


 「そう言うアンタはどうなのよ?」


 自然な成り行きから互いに見せ合う事になれば、互いのプレートを交換した。


 「魔力と魔法耐性が60の筋力や持久力とかは30。まぁ、良いんじゃない?加護も石化耐性とか毒耐性あるみたいだし、悪くないと思うわよ」


 興味無さそうに涼子がそう評すると、明日香と共に涼子のステータスを見ていた美嘉は驚きの声を上げてしまう。


 「ステータスが全部200って何さ!!?オマケに全属性に耐性があったり、詠唱無しで魔法使える魔導師ってチートじゃん!!?」


 涼子のステータスは加護を受けたとは言え、破格過ぎた。

 だが、涼子のソレはウルシアなる

 涼子自身がを《・》、少しずつ積み重ね続けた果てに得た力。

 ウルシアなる神は敵として認めた涼子に対し、加護を一切与えてないのだから当然だろう。

 そんな事をつゆ知らずに涼子のステータスに興奮する美嘉と明日香を他所に当の本人は、ゲンナリとした様子で嘆息を漏らし、心の中でボヤいていた。


 封印している状態でコレとか……

 改めて私がバケモノ魔女なんだなって思い知らされて最低な気分になる。

 私でコレだと、2人善人と千雨はどうなるのかしら?


 同時に2人のステータスに疑問を覚えると共に好奇心が沸いた涼子は美嘉と明日香から静かに離れると、2人の元へと歩み寄って尋ねる。


 「2人のステータスは?」


 「俺は多分、どれも最低値だ」


 善人からそう返されると共にプレートを見せられると、言葉通りの内容であった。


 「ステータスはどれも10で加護は無し。まぁ、貴方の場合は封印してる状態だから本来の数値が出ないわね。適性のある天職は剣士なのね」


 涼子がステータスを評すると、善人は暢気に返す。


 「勇者なんて出なくて良かったわ」


 「確かに勇者が2人も居たら、ややこしくなるわね。で?そっち千雨は?」


 善人から千雨に興味が移った涼子から問われると、千雨はつまらなさそうにプレートを見せながら答えた。


 「狩人よ」


 「ピッタリじゃない。でも、魔力と魔法耐性は低いのね……身体能力は高いけど」


 千雨の筋力パワー持久力スタミナ等の身体能力は75と高かった。

 だが、魔力と魔法耐性は20と低かった。

 しかし、千雨はそんな事を気にすら留めなかった。


 「ステータスなんて知ったこっちゃないわ。ただ、今ある手札で勝負するしか無い事に変わりないんだから」


 吐き捨てる様に返す姿は歴戦の猛者の様であった。

 実際、千雨は1度目の異世界に於いて歴戦の猛者とも言える程に戦い抜き、生き延びて来た戦士でもあった。

 そんな千雨の言葉は説得力に満ちていた。

 そうして、自分達のステータスにクラスメイトの面々が和気藹々とする中。

 1人だけ、お通夜ムードの者が居た。

 小柄な彼……岡本おかもと 清志郎きよしろうは自分のステータスが周りと比べ、とても低かった。

 それ故、項垂れてお通夜ムードになっていたのだ。

 そんな岡本 清志郎に気付いたのか?

 陽キャ気取りのバカ共が茶化し始めた。


 「岡本ぉ!お前のステータスどんなんだよ?」


 陽キャ気取りのバカ1号……遠山とおやま さとるはそう言うと同時。

 岡本 清志郎からプレートを奪い取ると、お仲間のバカ2号……佐渡さわたり 洋介ようすけとバカ3号の伊吹いぶき 優輝ゆうきと共に見て嘲笑し始めた。


 「ステータスどれも最低値じゃん」


 「草生える」


 「岡本らしいわぁ」


 3人から嘲笑されると、岡本 清志郎の表情は益々暗くなってしまう。

 そんな様子を拘りたくない。

 そう言わんばかりに遠目から見て見ぬ振りをするクラスメイト達を他所に、善人が前に出た。

 善人は3人に向かって堂々と自分のプレートを見せながら告げる。


 「俺もステータス最低値なんだよ。笑ってくれよ」


 善人の一言に3人は押し黙ってしまった。

 そんな光景に千雨は3人のバカ共に呆れてしまう。


 「アイツ善人にボコられたのが忘れられないのね」


 千雨の言う通り、3人は善人と喧嘩した。

 結果は3対1でやったのに、善人によって"半殺し"にされる結果に終わった。

 その結果、善人は1ヶ月の停学処分を喰らった。

 それ以来、3人は善人を恐れて居た。

 そんな3人に善人は優しく問い掛ける。


 「なぁ?俺もステータス最低値なんだけどさ?どうして笑わないのかな?」


 さっきまでの様子が嘘みたいに3人押し黙ってしまう。


 「どうしたの?舌を無くしたのかな?」


 紳士的に問うが、3人は押し黙ったままであった。

 すると、その様子に気付いたのか?

 それとも、生徒から通報を受けたのか?

 何れにしろ、担任教師藤澤秀平が止めにやって来た。


 「お前達、何をしてるんだ?」


 3人と岡本 清志郎、善人を離れさせてからそう問えば、善人はアッケラカンに答える。


 「ちょっと質問してただけですよ」


 善人の答えを聞くと、担任教師は彼等に向けて釘を刺す様に告げる。


 「イジメをするんなら、どんな手を使っても俺は退学に追い込んでやるから覚悟しろ」


 それは善人と岡本 清志郎にではなく、明らかに3人に対して向けた言葉であった。

 それ故、3人は何も言えなかった。

 そうして、ちょっとした問題が解決すれば、クラスメイト達はラルフ・ロンギヌス達と共に待ち構えるだろう戦いに向けた修練を始めるのであった。



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