忘れもしないクリスマス

音雲 夏空

忘れもしないクリスマス

 12月25日、クリスマス。

 別に普段と変わったことがあるわけもない、普通の日だった。

 でも、ある日から、それは意味のある日になり始めた。


 約3ヶ月前。いつも通り学校に行って、授業を受けて、友達と話して、部活やって、帰る。ただこれが毎日のように繰り返すだけ。きらきらした少女漫画なら、後ろ姿しか映らない、名前もないモブのような生活しか送っていなかった。

 いつものように過ごしていた何もない日。ある人が何故か本を読んでいる私のところに話しかけに来た。

「何の本を読んでるの?俺も本好きなんだよねこう見えて。」

 なんでこんな陽キャみたいな人が。って思ってる時にはもう、

「短編小説。この人の書くお話すごい好きなんだよね。」

と、返していた。そう言うと彼は笑顔を見せて

「え、俺も!今度図書館行こうよ!」

衝撃すぎる展開に頭がついていかないが、なんか優しそうだし、気も合いそうだしと思い

「いいよ。今度の休日にでも。」

そうやって返した。その時何か心がざわめくような感覚になった。まだよく分からなかったけれど、今考えたらきっと恋だったんだろうなって思う。


 少しずつ秋に近づいているがまだまだ暑い9月下旬。私と彼─怜央は約束をしていたように本屋へ向かった。変に緊張しているのはきっと私だけなんだろうな。

「どこから見る?推理?恋愛?ミステリー?やっぱり短編小説?」

怜央から出るそんな言葉に私の考えていたことは遮られた。

「あ、あぁごめん。どこでも、怜央くんの好きなところでいいよ。」

「じゃあ短編行こっか。」

「うん。」

何気ない話だけれどとてもこの時間が楽しかった。


 時が過ぎるのはあっという間で帰る時間になってしまった。

 そして私はここで今日一番の勇気を出した。

「あのさ、怜央くん。また一緒に行ってもいいかな。」

断られても落ち込まない。その選択肢しかない、そう思っていたから。でも怜央から出た言葉で私はまた驚くことになった。

「全然いいよ。俺も言おうと思ってたんだ。先こされちゃったけどね。」

こう言われると思わなかったから。自分から言ったのにもかかわらず一瞬困惑してしまったが、

「ありがとう。じゃあまた行こうね。」

とやっとのことで返すことができた。

 またこうやって怜央でいられる時間があるっていうことに嬉しさを感じたと同時に一つのことにようやく気づいた。

 私は怜央のことが好きなんだ。



 12月の中旬になりかけたものの、あれから特に何もなく平凡な日々だった。と思った矢先。

「ねぇ、クリスマスって空いてるかな。良ければ一緒にまた、どうかな。」

と、怜央の方からまた誘ってくれた。でも何かよそよそしかった。

 そんな彼に色々な疑問を抱きながらも、

「空いてるよ。大丈夫、また行こう。」

そう返した。また嬉しかった。


 それから終業式も終わりクリスマス当日。待ち合わせ場所である公園のベンチで私は怜央のことを待っていた。

 少し気合を込めたつもりで自分の中では色々見た目に気を遣った。 

 そして、待ち合わせ場所に彼が来た。

「おまたせ、って、いつもと雰囲気違うね。すごく、なんていうか、可愛らしいというか。」

会って一言目で雰囲気のことをはなしてくれた。たどたどしいけれど、すごく私的には満足だった。

「ありがとう。気づいてくれて。それじゃあ行こっか。」

「そうだね、行こう。」

と、とりあえず決めていた図書館やこの間は行かなかったショッピングモールとかに二人で足を運んだ。

 時間はやっぱり過ぎるのが早い。

 だけど私はこの前みたいに勇気を出して伝えた。

「あのさ、怜央。」

「どうしたの?」

「こんな目立たない俗にも陽キャとも言えない私で良ければ」

これで、断られても、もう、納得しかない。

「付き合って、くれませんか。」

伝えた。伝えられた。とほっとしていると返事は早かった。

「もちろんだよ。俺も、好きだった。」

きっと今まで生きていて一番の喜びを感じた。本当に嬉しかった。

 この時に私たちは付き合い、最高のクリスマスを終えた。


 だから私には忘れもしない、いや、出来ないクリスマスなんだ。

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忘れもしないクリスマス 音雲 夏空 @negumo_sora

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