簑城村

紅葉ひいらぎ

プロローグ

随分と細い字であった。

『拝啓、赤木 実様』

と真白な紙に蚯蚓ミミズが這ったような字で書かれた手紙は、私の心を妙に締め付けた。

小説家である私のもとに突如届いたその手紙は、非常に奇妙な物であった。

『突然のお手紙、失礼致します。此の度、赤木様に依頼が御座います。

完遂された際には、以下の金額をお支払い致します。』

そう綴られた後には、報酬として法外な値段が提示されていた。

常人なら此処で危険だと判断するべきだろう。

ましてや私は金に困っているわけでもない。

が、凄く興味を惹かれる内容であった。

依頼内容は至極簡単である。

廃村の中にある一本の樹。

その枝を回収するだけだ。

私は荷物を纏めると、車に乗った。

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簑城村 紅葉ひいらぎ @LAPIS_hory

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