第19話 手を繋いで歩きたい。

 女性がユニコーンに跨って先導するところを、なぜかシンゲンに手を引かれて着いていく。ユスラたちが着いてこようとしたが、それを手で制す。別にそれもスルーされていたので、やっぱり多分問答無用投獄ということはないのだろう。そう思いたい。ということで、ユスラには言語解読を期待しつつ、のそのそと歩くことにした。シンゲンに話しかけたいところだが、俺にはユスラほどの度胸がなく、どう切り出して良いかわからない。シンゲンも気まずそうにしている。うむむ……と思って、いや俺もちょっと語彙増やすかと思い、繋いだ手に力を入れて、指さし、「手」と言う。「手」「手」と言うと、「テ」と返す。そうじゃなくてよ。

「えーっと、手・え・でぃっと・なむ? ゔぁ・手・でぃっと・なむ?」

 それを聞いて、シンゲンは、「あー」と困ったように考え、

「手・さぐす・おくすか・ぱ・さまか・そむ・手」

 と言う。あー。だから「手」ってこっちでも「手」って呼ぶってこと? なるほど。共通語彙もあるのか。じゃあやっぱそれなりになんというか、似たような言語なんではなかろうか? と思って、とにかく一生懸命話しかけてみることにした。


「俺たちは、あの山脈の方から来たんだが、他にもあっちの方から来た人はいないか?」

「ていうか、ちょっと俺らと君らって見た目が違うか? もしかしたら。こういう、見た目の、人たち、知らないか?」

 すると、ユニコーン上の女性が、振り向きもせず言う。

「おとなしく、していなさい」

 わ、分かるんかい!! 「俺ら語」!!

「私、ではない、あまり。学者、わかる。ラマイの言葉。おとなしく、していなさい」

 だそうです。「学者」が職業として成立している! 結構すごいちゃんとした街なのかもしれない。っていうか「俺らの故郷」、あるいは「俺ら族」って、外からはラマイと呼ばれてるンですね。まあ、言うて、「ニッポン」って名乗ってるのに外からは「ジャパン」で認識されてるとかのケースは結構あるから、「俺ら国」全体を指すのかは全くわからんが。


 それで、その後はかなり大人しくシンゲンの手を握りしめて、この女性と学者がいるのであろう建物に向かった。そこはぐるりと塀で取り囲まれた立派なお屋敷で、客間というか応接間みたいなところに通された。シンゲンってどうすんの? って一瞬時が止まったが(魔法じゃなくてね)、なんかついてくることになる感じだったし、俺も不安だったので、横に座ってもらって、一緒に話を聞くことにした。

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