第18話 投獄は避けたい。

 ユニコーンから降りた女性が、何事か話かけてくるが、まあ今勉強中なんすよネ。良くわからん。一応ユスラに倣って、「はらー・だあ。みっと・なむ・あ・ヒエン。ゔぁ・え・でぃっと・なむ?」と言ってみた。したらムッとした顔でバカ早口で返してきやがんの。「みっと・なむ」もなかったから名乗ってないかめちゃ簡素に喋ってる。どうするかねえ。と思うと、シンゲンが女性に向かって何事か説明している。多分、「こいつら言葉がわからねえみたいなんです、でも今、言葉を教え合ってるところなんですぜ」みたいなことを言ってるのであろうと思われる。君良い奴だね! ちょっとデカくてムサいけど。しかし、女性は女性で不機嫌そうな顔を崩さない。まあ、官憲……にしちゃあ衣装的に煌びやかすぎる気がするので、なんか騎士とか……領主とか……? 的な人だと思うンで、まあ領主だとした場合、この支配地域を荒らす可能性のある奴をニコニコ受け入れる方がおかしい。しかし、シンゲンが結構話せてるところを見ると、そこまで暴君って感じでもないだろう(実はめちゃくちゃシンゲンが偉い人の場合はその限りではないが、めちゃくちゃ偉い感じはしないのでねえ)。投獄じゃあなければ、まあできればこの辺に滞在する許可を得て、頑張って言葉を覚えたい。でも投獄だったら嫌すぎるので逃げたい。なんか女性が、俺らの方を指さして、ジェスチャをしている。「どう考えても危ないだろ」みたいなことを言ってるような気がする。そうか? そんなに危ない……か? と思って、ああと思った。


 今、俺を取り巻いてた人たちは、見たところ魔力が薄く、ということでもしかしたら、俺らの魔力量についてあんま認識してないのかもしれない。一方、この女性は、かなり魔力量をお持ちで、ということはバカ魔力マンドラゴラ級の集団であると正確に認識しているのかもしれない。それはちょっとやばいよね。それで、もろ手を上げながら女性に近づいて、ジェスチャでマンドラゴラ粉を見せる。witness me! の気持ちで、粉を一口飲む。渋ィ〜ッ! そして、その粉を見せる。これ、あげてもいいですよの気持ちを込めて。


 これで俺の魔力がまた少し増えたはずである。どうも女性もそれに気づいたらしく、目の色が変わった。シンゲンに何事かを伝えて、シンゲンも頷き、俺らに手を差し伸べた。これが、「この者たちを捕らえよ!」だったらシンゲンは少し躊躇うと思う。ごくごく短い付き合いだがそうであると信じたい。俺は黙って着いて行くことにした。

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