第16話 せめて人語を解す化け物でありたい。

 それにつけてもすき焼きが食べたい。その決意を新たに、「町」っぽいところを探して歩く。川を渡ることはしなくても、これだけデカくて魚も豊富な川であるから、資源採取のために川に立ち寄ることは多かろう、ってことはあの山脈から見た「町」から川に向かう道が存在するだろう、ならば上流に向かって遡っていけばどっかに道らしきものが見つかるだろう、という推論で川をつたって登っていくと、果たして道らしきものがあった。そういえば、最後までちゃんと覚えられなかったが、俺たちの故郷(名前ってあるの? と聞いたら、「特に考えたことないね」と言われた)の方だと、木に傷をつけたり何か印を塗ったりしてそれを「道」としているくらいで、みんなが同じところを通ってわかりやすく地面に痕跡が残っているわけではなかったから、そういう意味での道、歩く人が多くなればそれが道になるのだ、の道、「どこを歩くんだっけ? 道〜」、の道ってすげえ久しぶりに見た気がして、なんかわからんがちょっと泣けた。目尻を拭いながら歩いてたらめちゃくちゃ不審がられたが、道があるとは思っていたが、本当にあると思ったら感動して……って言ったらなんかサンとか謎にもらい泣きしていた。良い奴すぎるだろ。


 でなんとか町に入った。やった〜。と思ったのも束の間、まず、視認できる範囲での町人の魔力が明らかに薄いなと思った。俺たちもマンドラゴラ食の影響でバカ魔力になってるのはそうなんだが、故郷の方ではみんなもうちょい魔力量多かったと思う。魔力が多いと、やっぱそれなりに悪いことができてしまうわけで、そういう意味では俺のバカ魔力によって警戒されてしまう可能性は十分にある。

 あるいは、そういう警戒を抑えるために、魔力を隠す方法というのがもう体系化されているくらい魔法に対しても理解が深まっている可能性もあって、その場合は逆に俺らは田舎者丸出しで歩いていることになり、それはそれでカモにされまくる恐れがある。ちょっとこれは気をつけなきゃなあ……って思ってるうちに、若干遠巻きに俺たちを伺う様子が既に見られた。これ、バケモノ扱いされてねえ? かなり終わったかもしれん。どうしようかなあと思っていると、その中で勇気のありそうなというか、単純に図体が大きい若者がおずおずと俺たちに声をかけてきた。


「ば・こまー・に・いふらん?」


 言語も通じないんかい。終わった。

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