第9話 良く当たる占いをしたい。

 上を向いて歩こう、涙がこぼれないように。


 つって、俺も拙い歌を披露させてもらったが、雨乞い祭りって楽しいですね!!

 集落の代表みたいな人の合図でみんなで雨を祈るが、とにかくユスラの魔力量がイカれているのもあって(流石にこれは自然消費しないみたいなので、諦めて集落には公開したのだが、特になんか問題は発生しなかったので良かった)、みるみるうちに一天掻き曇り(本当は数日かかるらしい)、どんざば降る雨に負けないようにみんなで歌ったり踊ったりする。総じてハッピーな祭りである。ほぼ3日3晩祭り倒して、晴れ間が見えた日、かなり疲労感があったが、しかし、水に濡れてマンドラゴラが腐ったりするともったいなさすぎるので、疲れた体を引きずって森の奥に向かう。無事にマンドラゴラは抜けていた。幸い腐ってもいなさそうなので、持ち帰ってきて、メープルシロップで溶いて、とりあえずユスラ以外の3人で分けて飲む。うん!! 不味い!!! ノニみてえな味。古い赤ワインの後味の渋みだけを純粋に抽出したような感じ。メープルシロップ意味あるか? と思うが、なかったらもっと酷いのかも。かなり辛いが、しかし、一口飲むごとに自分を取り巻く魔力量が目に見えて増えるので面白くて、まあなんとか完飲した。


 これで魔力量に余裕ができたので、マンドラゴラ(を煎じる時にやった)占いもやり放題になった。これまでは、なんかの間違いで魔力が枯渇したら嫌だったので控えていたのだ。そしたら結構面白いことがわかった。


 この占いの結果は、おそらく、「この世界において知られている知識の総体(どのように「総体」が構成されているかは不明)」と「術者(魔力を使った人)の知識」のミックスで生成される。


 たとえば、「境界線によって囲まれたいくつかの領域からなる平面図形があり、境界線の一部を共有する(隣り合った)領域は異なった色で塗らなければならない、としたとき、4色あれば十分である」「境界線によって囲まれたいくつかの領域からなる平面図形があり、境界線の一部を共有する(隣り合った)領域は異なった色で塗らなければならない、としたとき、4色では十分でない」と書いて、俺が棒を倒すと100%「十分である」の方に倒れるが、サンやウカが倒すとそもそも魔法が発動せず、ランダムに倒れる。これに「わからない」を付記すると100%「わからない」に倒れる。一方で、「三角形の内角の和は180°である」「三角形の内角の和は180°でない」と書くと、サンとウカはそういうことをあんまり考えたことがないという話だったが、にもかかわらず「180°である」の方に倒れる。

 すなわち、この世界のどこかには、「三角形の内角の和が180°である」ことを証明して、常識になった人たちがいて、それがこの魔法発動に影響している。一方で4色問題は多分まだ証明されておらず、俺は「どうやら証明されているらしい」と知っているからそれが影響して「十分側」に倒れるが、サンとウカはそれを知らないし、「世界」もそれを知らないため、「わからない」に倒れるというわけだ。ということで、「まだこの世の誰も知らないことを魔法の力でとにかく証明する」というのは不可能であるらしいことと――――どうやらこの「世界」が、もともと住んでいたところと、かなり厳然と分かたれたものであるらしいことがわかった。そうなんだねえ。遠くに来てしまったものである。


 ということで、「この世界」のどこかに"それ"が常識レベルであるならば、今俺が知らなくても少なくとも存在することは確認できることがわかった。よし。やるぞ。俺は胸を高鳴らせて、地面に


「牛肉」は存在する ┃ 「牛肉」は存在しない


 と書いて棒を倒した。

 




 棒は「存在」方に倒れた。

 終わった。

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