第3話 妹を救いたい。
流石にね。今は「すきやきが食べたい」とかは思ってないですよ。妹を救いたい。落ち着いて良く見ると大変具合が悪そうである。ヒエンくんもおそらくは「これはまずい」と考えて無謀な挑戦をしたのであったのだろう。そのくらい事態は切迫している……が、このマンドラゴラをどうすれば回復につながるのかが分かってないというのが問題である。頼む! 有名で有効な治療法があってくれ!!
「って言われても……マンドラゴラなんてはじめて見るから、どうしたらいいのか……」とウカが困っている。終わったかも。そんなレアなのかよ。
「ヒエンさん……は分からないよね。ユスラさん。君の症状は魔力欠乏症かな?」
サンさん!! 頼りになる!! つか魔力? 魔法とかあんの? とちょっと興奮しかけたが、今そういうんじゃないんで。そうですよね。ユスラは力なく頷いた。そうらしいです! サンさん!!
で、ユスラに無用な心配をかけるのもあれなので、部屋の片隅であれこれ聞いたところ、概ね次の通りであった。
まず、この世界には魔法がある!! ちょいアツだが、ユスラが健康にならぬ限りここで盛り上がっている場合ではないので、一旦置いておく。
で、この魔法の力、すなわち魔力、によって、我々は自己そのものを守っている。免疫力のこと魔力って呼んでる?? そうだとしたらちょいサムだが、とにかく、この魔力が欠乏すると、見ての通り病気になって体調が不良になってしまう。魔力は自然に回復もするが、言うても微々たるもので、サイクルが悪い方向に向かうとこの自然回復ではどうにもならんくなる。そこで、自然回復を超えた一気呵成な回復が必要で、その魔力回復薬、すなわち「エルフののみぐすり」の原材料がこのマンドラゴラであろう、ということである。ただ、マンドラゴラの存在自体が極めて希少で、しかも採取難易度も高いときたモンで、具体的にどうすれば「魔力回復薬」になるのかはわからないという。
というところで、魔力にテンションがあがって聞きたいわけではない質問を思いついた。
「それ自体を『魔法』で調べることはできない?」
そう聞くと、サンとウカは顔を見合わせる。なんか無理そうで、どっちがこの何一つわからんやつに説明する? という雰囲気で、いやじゃあ無理なら大丈夫です、もっとまともな方法を考えようと言おうとしたところでウカが代表して口を開く。
「まず、『魔法』を忘れているのが信じられないんだけど……イチから言うね。『魔法』って、ものすごく簡単に言うと、『とってもラッキー』ってことなんだよね」
「はあ」
「お魚の中に虫が棲んでいて、それを食べるとお腹を壊すことがあるよね。『魔法』を使って、このお魚を切って、生のまま何切れだけか食べるのだったら、お腹を壊さずに済むと思うけど、お魚を丸ごと全部食べちゃったら、『魔法』ではどうしようもないからきっとお腹を壊すと思う。どう? わかる?」
「わかった。偶然の中では最良というか望んだ結果を選択できるけど、偶然にも起こり得ないことは起こり得なくて、必然のレベルになったらそれを回避することはできないってことかな」
「そう……だと思う。これが『正しい』という保証はないけど、だいたいそういう風に理解して、矛盾することはないと思うよ」
なるほど。なるほど……。だったらこれはどうだろう。
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