第2話 ドジっ子皇女の得意種目
「ったく……無線イヤホンも知らないかよ……本当にドジっ子かよ」
文句を
「ごめん……ごめんね……おねがい……わたしを捨てないで……いい子になるから……」
上品で
「『いい子』ってなんだよ、“俺のお嫁さん”だろ? 別に怒ってないよ」
すると、俺はこの十年間で一番聞きたいことを彼女に聞いた。
「この十年間……どこに行ってたの?」
彼女は少し考え、あまりいい機嫌ではなさそうに言った。
「オランダだよ……父さんに会いに行った」
彼女はオランダの皇室の子、日本人女性と結婚して生んだ子とはいえ、オランダで婚約者を決めるのが当たり前だ。
「あと少しで二度としゅうかくんに会えなくなるところだったよぉ……」
彼女が落ち込んでいる姿は、慰めが欲しい子どもみたいだ、俺は優しく彼女を抱きしめた。
「父さんって……“アルヴィン・アジュール様”?」
アルヴィン・アジュール様はオランダの皇室の人だ、彼は日本人の
「うん……私と母ちゃんがしつこくお願いしたから……また日本に戻れた……」
俺は落ち込んでいる彼女を慰めるため、話題を変えた。
「よし! そろそろ夕方になるから、ごはん作ろっか!」
「私がつくるっ!!!」
彼女は一瞬で機嫌が戻り、キッチンに向かおうとする。
俺も彼女の手料理を食べたいから、今夜彼女の寝室の準備をすることにした。
すると、俺はあることを考えはじめた。
「せっかく明日結婚するし……いっしょに寝てもいいかなぁ?」
いやいや、いくら彼女は幼馴染でも、皇女だということに変わりがない。
なによりあんなかわいいすみれちゃんと一夜寝るのは……俺の理性が本性に負けるかも……。
俺はじっくり考え、二十分くらい悩んでいたが結論は出ず、俺は“あるまずいこと”に気づいた。
「“あの”すみれちゃんに料理をまかしていいのかぁ??」
彼女のドジっ子性格なら料理中にたまごを全部落として割ってしまったり、米をこぼすことなど全然ありえる。
なにより、もし火傷や包丁で手を切ったりして、けがしたらいやな思いさせることになってしまう。
俺はすぐに部屋から飛び出した。
「すみれちゃん! やっぱ料理は!!」
しかし俺は目の前の光景に
「おっ! しゅうかくんナイスタイミング! ちょうどつくり終わったよ!」
「『しゅうかくんラブ!!』?」
それはオムライスの上に乗せているケチャップの文字だ、かわいくてほどいい大きさの文字だ。
「も〜読み上げないでよ〜恥ずかしいじゃん!」
まさかあのドジっ子である“すみれちゃん”が、料理だけうまいとは思いもしなかった。
「おおお……おいひほう……」
「なに語?」
なっ?! 今度は俺がツッコミを入れられてしまった。
彼女はいすに座り、俺もその横に座った。
「おいしそうでしょぉー! 料理だけは“ドジっ子”って呼ばれたくないなぁ!」
俺はオムライスをスプーンで俺の口に運んでみたら、その味はみた目どおりにおいしい。
「天才かよ……一生おれのごはんをつくってくれ!!」
「え?」
「うん?」
彼女はまるで頭の上にハテナがあるように小さな頭を傾け、俺に言った。
「当たり前じゃん? わたしはしゅうかくんのお嫁さんだし」
彼女のわけがわからない困惑しているかわいい姿を見た俺は思わず大笑いした。
「そ……! そうだね!!」
「ちょっ! なにが面白いの?! 急に笑わないでよぉ!!」
夕食を終え、俺は今夜どう寝るか彼女にたずねた、どっちで考えてもおかしい、結婚相手と寝るのは一般的に思われる。
しかしまだ彼女と結婚していない、それに皇女と寝るのはなんだかまずいと感じる。
「しゅうかくんは……わたしと寝たい?」
彼女は慎重に俺に聞いた、声のボリュームは少し小さめ。
「うん、寝たい」
「じゃ! いっしょに寝よ!」
彼女は満足する回答をもらったように、興奮しはじめた。
「わかった!」
その後、交互で風呂に入り、俺は彼女からこの十年間で経験したことや学んだことをきいた。
人というのは一方的に話させると、飽きたり、退屈になってしまう。
しかし彼女の心に響くかわいい声が俺の鼓膜に伝わることは決して退屈なんかにはなれない。
「わたしね! おえかきができるようになったの!」
「どれどれ見せて!」
彼女が出したのは男性と女性がキスし合っている絵だ、色えんぴつで描いていて、特にすごくうまいとはいえない、小学生の中で絵がうまい人が描けるぐらいのレベルだ。
「これわたしぃ! これしゅうかくんをイメージして描いたよ!」
「そんなに俺とキスしたいのかぁ? 明日結婚式だし、キスできるよ〜」
すると、彼女の桃色の頬が赤くなり、恥ずかしくなった。
「う……うん」
いざ就寝の時間になり、俺は彼女と同じベッドへ横になった。
特になにも起こらなかった。
彼女と手を繋いでいるだけで十分幸せな気持ちになれたし、彼女も同じ気持ちだろう。彼女と二人、とても幸せな気分で眠りに着いた。
そして次の日、俺たちは早々起きて結婚式の会場へ行った。
俺は長年来ていないスーツで行き、彼女はなぜか会場に用意していたドレスをもらって着ていた。
「そのドレス……」
「昨日結婚式の予約でつけといたよ! なにより、私は皇女だからそれぐらいはつけてくれるよ!」
会場は特に大きくもなく、ごく普通のホテルで実行する。
俺はゆっくりと台上へ向かった。
「やっぱ急だな……昨日まで普通に生活してたのにな……」
「新婦、入場!」
神父の大きな声が会場を盛り上がる。そして、スノーホワイトのドレスを着ている彼女があらわれ、俺の方に向かった。
彼女の金系の髪と、
本当にかわいい、っという囁きが俺が今言える唯一の言葉。
いざ俺の前に来ると、俺はなんだか気まずくなった。なぜなら、彼女はほとんど俺と身長がかわらないという圧迫感を感じる。
すると、突然扉が強烈なパワーで開けられ、「パーン」っという音が響いた。
俺と彼女が振り返ると、思わずたまげてしまった。彼女は困惑している声で言った。
「父さん??!!」
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