幼馴染のドジっ子皇女を家に連れて帰って結婚しちゃった。

雪方ハヤ

第1話 ドジっ子皇女は幼馴染?

「ねぇねぇ! 秋歌しゅうかくん! 最近この本読んだよ!」


 彼女の名は永庭菫ながにわすみれだ、俺より二つ下の十歳の子だ、日本人とは思えない金髪碧眼きんぱつへきがんに雪に近い乳白色の肌を持っていて、俺より頭一つ分小さな可愛い女の子だ。


 いつも日曜の昼でこの松の木がたくさん生えている公園で遊んでくれる。

 何事も俺に言ってくれる子だ、俺はこの子に恋をした。


「わたしぃ! この前! 自分でご飯食べれるようになったぁ!」


 彼女はドジっ子の性格で、十歳にして、ようやく自分でご飯を食べれる、しかしそんな可愛い彼女と人生を過ごしたい。


「秋歌くん、こんな不器用ぶきような私を好きになってくれるの?」


「うん! だってすみれちゃんのことが大好きぃ!」


 彼女の笑顔はずっと見つめたい、天真爛漫の笑顔、世界で一番美しい笑顔。


「じゃあ! 将来秋歌くんに好きな人ができても、私を捨てないでね!」


「あたりまえだ!!」


「私を秋歌くんのお嫁さんにしてね!」


 そのときは楽しかった、人生で一番楽しかった。

 しかしとある日曜から、俺は彼女の姿が見えなくなった。


「すみません! 僕より二十センチくらい小さい金髪の子どこに行ったのか知ってます?」


 近所の人全てに聞いた、しかし誰一人も知らない、彼女は“消えた”ように俺の生活から離れた。


「おい! 赤倉あかくら! なにぼーっとしてんだい?」


「え?」


 俺の名は赤倉秋歌、俺に声をかけたのは、三年前から知り合った友人の絵之風明えのかぜあかり、俺より三歳も年上で、俺をずっと支えてくれる優しい男だ。


「またあの“すみれちゃん”のことを考えてるの?」


「そうだよ……すみれちゃんは今何をしているんだろう……ご飯ちゃんと食べてるかなぁ? 一人で遊べるようになったかなぁ?」


「お前は心配症しんぱいしょうすぎるだよ」


 十年も離れたからね。

 すると、絵之風はちょっと大きい新聞紙を出して俺に言った。


「ほら見て! オランダの皇室の人と日本人女性が産んだ子が今年で二十歳はたちになって、日本で婚約者決めるんだって! この子身長百八十もあるんだって!」


 俺は彼の新聞紙を取り、内容をゆっくりと読んだ。


「『望姫もちひめ アイビー・アジュール様、日本で婚約者を決める!』? まぁ俺には関係ないでしょ」


 望姫 アイビー・アジュール様は、菫ちゃんと似たような金髪碧眼を持っているが、菫ちゃんとは違った上品さがある。

 なによりまさか十年前まで俺より二十センチも小さい女の子が、急に百八十センチのお姫様になるとは思えない。



「お前が好きそうなタイプじゃん〜お前といえば胸が大きい女が好きじゃん!」


「しね」




 俺はその後、自分で昔行ってた松の木の公園でゆっくりと小説を読むことにした。

 俺は公園には子どもが遊んでいる騒音と、ゆったりとした場所で小説を読むことが好きだ。


 ベンチに座り、よし! 読むかっと思ったその瞬間、公園の騒音が一瞬にして消え、風がゆっくりと俺に当たる音しか聞こえなくなった。


「うん?」


 俺は疑問をもって顔を上げたら、周りの人は唖然と一つのところに目が引かれている。

 俺から三十メートル離れたところで、一人のホワイトスノーのキャミソールワンピースを着ている金髪碧眼の女性が、俺の方を見て涙ぐんでいる。



「望姫 アイビー・アジュール様?」



 なんで“あのお姫様”がここにいるんだろうと思ってたら、アイビーは全力でこっちに走ってきて、俺を少し強く抱きしてた。


「お……お!! アイビー様??」


「しゅしゅ……しゅう……かかくん……だよね?」


 俺は少し息が苦しくなった、なにより俺も百八十ある男なのに、急に同じ身長で、柔らかい体の女性に抱きしめられたら誰でも息しづらくなる。


「あ……は……はい! あかくらですっ……うっ!」


 すると、彼女は涙ぐんでいる瞳を俺の方に向け、震えと焦りを含んだ声で言った。


「しゅーかくーんぅー!!! 会いたかったよぉ!! 色々話したいことがあるの!」


「ちょ!! アイビー様?!」


「わ……私ね! ご飯を作れるようになったの! いつか秋歌くんに作ってあげるね……あと……あとぉ」


 しかし俺は彼女の急な話を止めた。

「アイビー様? だよね? いきなりなにを?」


「秋歌くん!!! 覚えてる?!! すみれだよ! “君のすみれちゃん”だよ!!!」


 は?


 いや、どう考えてもおかしい、確かに目の前にいるのは望姫 アイビー・アジュール様だ。

 俺が知っている“永庭菫”ではない。身長も雰囲気も違うが……心に響くあの声が少し似ている?


「す……すみれちゃん? いや、アイビー様?」


「じ……実は昔秋歌くんと一緒に過ごしてた永庭菫は……私が勝手に作った偽名ぎめいで……確かに今は“アイビー”だけど!! 私は“秋歌くんのすみれちゃん”だから!!」


 彼女の玲瓏れいろうかつ震えが含んでいる泣き声はなんだか俺の心も傷んでくる。


「もしかして……私がいない間、秋歌くんが好きな人できて……私をすてるのぉ?」


 そんなわけがない、俺はずっとこの公園で、“俺のすみれちゃん”を待っている。

 しかしあのお姫様がすみれであるとしたら、あまりにも変化が多すぎる。


「ほんとうに……すみれ……ちゃん?」


「うん! うん! うん!」

 彼女は大きく頭を上下に振った。


「私を……お嫁さんにするよね? すてないでよぉ!!」


「当たり前だ」


 俺は十年も待っていたあの人をぎゅっと抱きした、もう離したくない。


 ずっと永遠と俺の側にいてくれ。


「私ね! 今年で二十歳になったから、父さんから自由に生活していいよ! って言われたからさぁ!」


 俺は次の言葉に驚く、そして頬を赤らめた。


「私たち、今日から同居生活始めて! 明日結婚しよぉ!」


「は……はっやーー!!!!!!」


「結婚式は大きいやつじゃあ間に合わないから……退屈だけど……ちっちゃいやつでもいい?」


 もちろんいい、なぜなら俺はここ十年間、何度も菫ちゃんと結婚したいとずっと願い続けたから。

 しかしあまりにも急すぎて意識が追いつかない。


「わ……わかった! じゃあ着いてきて!」

「うん!」



 まさかすみれちゃんと出会ったことは嬉しいけど、皇室の皇女を家に連れて帰るという事実は変わらないからな。

 急に兵士が現れて俺を逮捕するのかなぁ、怖いな、っと俺はずっと心配したが、彼女の声が再び俺の鼓膜に伝えると、俺はほっとする。


「わたしぃ! この十年間のなかで、色々勉強したよぉー!」


「不器用じゃなくなったね! どれどれ聞かせて!」


 俺は昔のように優しく彼女に接した、このときが一番幸せだ。


「まず一番の進歩は自分で服を着替えることができたかなぁー!」


「やっぱ不器用だ」

 へぇー十年前に比べて成長できたねぇ!


 やべ!! 言うセリフと考えてることが逆になっちゃった! すみれちゃんを傷つきたくないのにぃ!!! 俺最低だわ!! っと俺は落ち込んだが、彼女の笑顔はまだ消えていない。


 すると、彼女は急に歩きながら俺のことを抱きしめた、ちょっと痛いかも、しかしほぼ同じ身長だから全身で彼女の体温と体の柔らかさが感じる。


「そんな不器用な私を……お嫁さんにしてくれてありがとう!」


 これが俺と幼馴染の皇室の皇女との恋の同居生活の始まりだ。





 家に着くと、彼女は色々俺のものを触り始め、動きが止まらない。


「すみれちゃん! それ無線イヤホンだから食べられないよ!!!」


「むへんいやほん?」


「無線イヤホンだよ!!!!」

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