雑踏の交差点

第33話

学期末試験が終わったお祝いにスイーツが食べたいとワガママ言って出かけた繁華街の雑踏の中。

わざと少し離れて交差点を歩く。

気付くかな?

気付いてよ

見つけて

ここにいるよ


彼はふうっと視線を彷徨わせて。

たくさんの人の流れに埋もれるあたしの姿を必ず見つけ出して。

名前を呼んで。

宝物を見つけた少年のような顔で笑う。

春も夏も秋も冬も。

昔も今も。

その笑顔に安心する。

ああ、今日もここにいていいのだと。

彼が学年が一つ下だとか、今年の冬が終われば卒業で離れてしまうとか、試験期間に持て余したモヤモヤが瞬間に吹き飛んでしまう。

ただ、大好きが溢れて。

自分の中に留めておけない。

「昔から知ってる女の子」じゃ足りなくて。

「彼の心に住んでる女の子」になりたい。

そしたら、毎日おはようからおやすみまで一緒にいられるのに。



でも今は叶わないから。

ねぇ?名前を呼んで。

それだけでわたしは微笑みの花を『咲』かせられるから。

せめて笑顔でキミのそばにいさせて。



〈scene end〉

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