兄貴分と弟分

第32話

「も〜直ちゃん聞いてる?!」

はいはい、聞いてますとも。

夕(ゆう)の彼氏とのラブラブ話しでしょ。

「そうなの〜♪裕太くんてば『今度のクリスマスは直がプレゼントがいい♡』とか言ってて〜!いや〜んヤバイ!素敵なホテルも用意してくれるんだって!!やぁっぱり大学生は違うよねぇ〜んふふ」

そうね。裕太くんカッコいいもんね。

(夕が席を立ったら即あたしのこと誘うような緩い男だけどね)

「直ちゃんはクリスマスどうしてるのぉ??」

あたし?いつも通り家族と過ごすかなぁ。

「ふぅ〜ん♪直ちゃん美人だし、男の子が放っておかないのにもったいなぁ〜い。

あ!夕と裕太くんと一緒にクリパする?」

(何の罰ゲームよそれ)

夕の方が美人でしょう?お肌スベスベだし、読モやってるくらいスタイルいいし、髪の色そんなに明るいのに先生に何も言われないの夕くらいだよー?

「えへへ♡先生とか、昔から怒られたことないんだよね♪

えーでもやっぱり髪の色明る過ぎ?ゆぅ的にはもう少し明るくしてくるくるにしたいんだけどなぁ。スタイリストさんも「夕ちゃんは明るい方が絶対似合うよ!」って言ってくれるんだよー」

ふーん。あ、ごめんLINE。


【海】

『お前俺のトップスのチョコレートプリン食っただろ!』

『ご馳走様でした』

『くっ…今日の帰り買ってこいよ!

でないと今日の夕飯、直の分だけ卵無しのチキンライスにしてやるからな!』

ヤバイ、あたしのオムライスの危機。

海のオムライス、卵がとろふわで美味しいんだよね。

『今から買って帰るよ』

ごめん、夕。家族から用事言われたから今日は帰るね。

「えぇ〜最近の直ちゃん付き合い悪過ぎ〜!昨日のカフェもこの前のショッピングもダメだったじゃん!

かれぴできたんだぁ〜〜!!」

(彼氏…ではないよね)

日曜日は夕が裕太くんとのデートで時間変更になっちゃったからだし、昨日は夕が課題忘れて居残りになったからでしょう?

また明日ね、夕。



ヴヴーヴヴーヴヴー

【陸】

『なお、これから帰りなんだって?俺も同じくらいの時間になるから一緒に帰ろう』

『いーよー』

『駅前のいつものとこね。ちゃんと街灯の下にいてね?』

『了解』


ヴーヴーヴー

【海】

『陸からLINEあったか?ちゃんと一緒に帰ってこいよ?

あと、チョコプリン忘れんな!』

『あったよー

タイミングよすぎ さすが双子w』

『俺の方が先に産まれたんだっつーの』

『海よりあたしの方が先に産まれたし』

『ほんの10分前じゃねーか

産まれたときから一緒なんだから三つ子みたいなもんだろ』

『いやいや母親違うし 笑』


ヴヴーヴヴーヴヴー

【陸】

『何時の電車?』

『んー6時10分くらいのやつ

今駅のホームだから、乗ったらまたLINEするね』

『おっけ。ゆっくりでいいからね』

『ありがと』

『どこか寄るところある?』

『コンビニ チョコプリン買うの

海の分』

『じゃあ、どこも寄るところないね♪』

『笑 あたしが海のチョコプリン食べちゃったからダメ

コンビニ行ってもいい?』



【陸海直(3)】

『海お前チョコプリン別にいらないよな』

『はぁ?いきなりなんだよ!

しかもあれは、元はと言えば直が食ったんだぞ!俺のプリン!』

『しかもトップス w』

『外寒いし暗いのになおを余計なとこまで歩かせんな あほ』

『だからお前にわざわざ連絡したんだよ!

どうせお前の中身知らない女が声かけてくるのが面倒くせーんだろ』

『お前のためとかコンビニ行く気失せる』

『。・゜・(ノД`)・゜・。』

『今回はあたしのせいだから買うよ

ついでにハーゲンダッツ買う♡』

『それいいね。一緒に2個買おう』

『ずりぃ!!』

『海はチョコプリンだろ』

『俺もハーゲンダッツ!』

『却下』

『却下w』

『。・゜・(ノД`)・゜・。』

『陸、電車乗った』

『了解』

『くそっ!!

お前ら…俺をなんだと思って…』




『ん?


陸や海は、家族。一番大事』


送信ボタンを押したタイミングで最寄り駅に電車が到着する。

古びたホームを抜けた先には弟分の陸が、家には勝手知ったる兄貴分の海が待っている。

だからさ、夕。

クリスマスは『家族』と過ごすから夕達とは一緒に遊べないんだ。

ごめんね。



〈scene end〉

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