第2話 入学試験? 魔力測定? やってやらぁ!!

「———ねぇ、あの子……」

「うん、この学園の入学試験に遅刻するとか、絶対落ちるよね」

「偶にいるよな、こういった記念受験みたいなことする奴。俺達が必死にやってるってのに、そういう奴がいると萎えるんだよな」

「ホントやめて欲しいよな」


 たった2分遅刻しただけなのに、物凄い言われ様だ。

 周りに座る受験生達の視線が厳しく、力の制御に四苦八苦していたせいで変な奴扱いされた過去の中学校時代を思い出した。

 まぁ日本のゲーム会社が作ったのだから、時間厳守的な節があるのだろう。陰口も然り。夢のない世界。


「はぁ……悪い方で目立ってどうするよ俺……。いや、これは転移をほんの数日前にしたあの神が悪いな、うん」


 何て反省の色が見えるどころか、華麗なる責任転嫁をし始めた辺りで……俺を公開処刑にでもするように皆んなの前で怒ってきた総試験監督が、意地悪げな顔に優越感か何かを張り付けつつ簡易的な壇上に上がる。


 うわぁ……アイツ絶対性格悪いよ、元勇者の勘が告げてるもん。

 どうせなら初っ端声が裏返って恥をかけばいいのに。


 何て思ってみるものの、流石に【声を裏返らせる】なんていうスキルはないので大人しく座っていれば。


「———こぉっ! ……んんっ、失礼。これから入学試験を始める」


 あらびっくり、本当に初っ端で声を裏返らせたではないか。

 しかも地声が低いだけに、掠れたような裏声が酷く滑稽だった。

 多分神が御詫びとしてやってくれたのだろう、きっと。


 お陰で受験生達のビリピリした感じもほんの少しだが薄れた気がする。

 神の奴中々に粋な計らいをしてくれるじゃないか、と気分良く思っていると。


「まずは魔力測定からだ。今からお前達の前に測定器が配られる。それに全力で魔力を流し込んだ後、測定器は椅子の下に置いておけばいい。所詮使い捨てだからな。魔力がなくなれば、魔力回復のポーションも用意してあるから気にしないことだ」


 そんなことを宣い、総試験監督がパチンッと指を鳴らした途端、何処からともなく俺達数十人の膝に測定器が現れた。

 測定器の見た目は、占いなどで使う水晶玉みたいな物だ。


 …………あっれぇ? 

 実はこれ、目立つの難しくないか?


 だが、大国が運営する学園なら使い捨てが出来るというのも分かる。

 というか、今までのラノベやら漫画やらの1人1人やる奴の方がおかしいのだ。

 だから此方が普通であり、従来のが効率が悪いなんて話ではなく、ただただ頭が悪いだけなのだ。


 しかしこうなってくると話が変わってくる。

 

「…………」


 自分の膝に置かれた水晶玉を見下ろして、段々自分の気持ちが萎えていくのが手に取るように感じられる。

 更に言うなら……。



「———……何かこの試験場、魔力多い奴多くね?」



 それなのだ。

 異世界なので、髪がカラフルだったり、比較的飛び抜けた美男美女が多かったりはもう慣れたのだが、ちょっと俺が知っている異世界人の平均より、大分魔力が高いのである。

 

 こーれ、由々しき事態ですよ。

 これだと俺の凄さが霞んでしまうじゃないか。



 ———と思っている奴(俺)がいるだろうが、安心して欲しい。


 

 俺の凄さは俺が1番よく分かっている。

 自慢でも強がりでもなく、もしここにいる全員対俺で戦うとしたら、多分だが30秒以内……いや1分以内で倒せるだろう。

 異世界勇者の名は伊達ではないのだ。


 時間が増えたのは、数年のブランクがあるからで、他意はない。

 決してビビって安牌を狙ったわけじゃない。


 何て自慢や言い訳も挟みつつ、俺は周りでチラホラ水晶玉が光り始めたのを見て慌てて始める。


 えっと……何すれば良いんだっけ?

 確か手を触れて魔力を全力で流せば良いんだよな……?

 やべ、ちょっと不安になってきたんですけど。


 先ほど日本人がどうちゃらこうちゃらと言ったくせに日本人特有の心配性が発症してしまい、恐る恐る、出来るだけ申し訳無さそうに、まだ始めていない左隣の美少女に尋ねてみる。


「す、すみませーん、ちょっと良いですかね……?」

「はい、大丈夫ですよ? どうかいたしましたか?」

 

 こんな俺にも礼儀正しく接してくれる金髪碧眼の可憐な美少女……恐らく貴族か何かだろう。

 これ、下手なことをしでかしたら懸賞金掛けられるから、注意して接しておかなければならない。


「これって、魔力を流すだけで良いんですよね……?」

「ふふっ、合ってますよ。ですが、流石に使い捨ての物なので、魔力切れになるまで注がなければ正確な結果が出ないので注意してくださいね?」

「本当にありがとうございます、神より感謝してます」

「ふふっ、私も緊張していたので丁度良い息抜きになりました。ありがとうございます」


 ヤバい、この子良い子すぎる。

 俺が精神年齢20前半じゃなかったら普通に惚れてしまいそうだった。


 相変わらず女性の免疫無さ過ぎで草、と自嘲しながら水晶玉に手を当て———


「よし、目立ってやる……!!」


 俺は全力で魔力を流した———!










「———う、嘘でしょ……!? そ、そんなことがあるはず……!?」


 測定器の結果を集計する女性の1人が、爆発音や外で起こる喧騒すら気にならないほど驚愕に目を見開きつつ、呆然と声を上げる。

 そこには———。



『キョータ・ヤソラ:魔力数値測定不可。推定魔力量『神話級』以上》


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