帰還勇者が知らないゲーム世界で目立った結果、美少女達からの攻撃が始まった

あおぞら@書籍9月3日発売

第1話 ゲーム世界に転移

「———おおー、ここが例の王立アルティマス魔法学園か。王立ってだけあって金使ってんなー」


 目の前に聳え立つ、ドデカく煌びやかな校舎。

 そんな太陽の光に照らされて眩しいくらいに輝く校舎を下から見上げつつ、夢もクソもない感想を溢しているのは、俺こと矢空響太やそらきょうただ。

 この学園に入学するべく、こうして試験を受けに来ただけの、しがない受験生である。

 

「えーっと……第3屋外訓練場? どこだそれ」


 俺は数日前に試験の受付をした際、当日忘れない様にと言われて貰った紙を見て首を傾げる。

 生憎俺には時間がなかったもので、学園の施設については殆ど知識がない。


 と言うのも、俺は転生者……いや、転移者であり、つい数日前にこの世界に来た。

 何かスマホのソシャゲで最強キャラを当てた嬉しさで神が制限していた魔力のタガが外れたらしく、慌てた神が転移させたんだとか。


 しかもソシャゲに興奮するがあまり転移させられたのが、名前すら知らないゲーム世界とは、何かの皮肉だろうか。

 まぁそのことをこれ見よがしに神に告げられた時は、思わずぶん殴ってしまったが……今はそんなことどうでも良い。


「え、ヤッバい。遅刻は洒落にならんて」


 俺は着々と迫る試験開始時間に焦りつつ、キョロキョロと辺りを見回して、この学園の地図か人が居ないか探してみるも。


「何でだよ、全然居ないじゃん。この学園って一応、人族の中ではトップ5に入る学園じゃなかったのかよ」


 地図はもちろんのこと、まるでこの世界に俺1人が取り残されたかの様に誰も居なかった。

 



 ———数年前、単独で魔王討伐を成し遂げた時の様に。




 何か厨二病っぽくて嫌だが、俺は一応この世界に転移する前に、一度だけ異世界に転移したことがある。

 それも勇者として、だ。


 当時中坊でクソガキ厨二病だった俺は、ラノベやマンガ、アニメなどで手に入れた浅知恵から誰かとパーティーを組んで戦うのは良くないと、勝手に思っていた。

 何なら1人で倒した方がカッコいいだろ、とも思っていた。


 今考えてみれば、馬鹿丸出しで短絡的としか言えない浅はかな考えだ。

 だが、それに手遅れになるまで気付かなかった馬鹿代表の俺は、結局1人で黙々と力を付け、10年の歳月を要したものの、何とか討伐に成功した。


 

 ……まぁ魔王討伐したその場に、勝利を喜び合える仲間は1人として居なかったが。 

 何なら称賛の1つもなく帰還したが。


 

 ……うーん虚しい。

 しかも自分の痩せ我慢が招いた結果だから、余計虚しく感じるよな。


 そんな経緯から、俺が2度目の転移をしたことで願望が出来た。



 ———目立ちまくって、周りからちやほやされたい。それと心の友も欲しい。

 



 目立てば、必然的に近付いてくる人は増える。

 別に目立たずとも友達になりたい人の所には俺から行っても良いのだが、それだとちやほやされることはない。



 俺は———俺の等身大を見てくれる奴と親友と呼べる関係を構築したいが、周りからちやほやもされたいのだ。



 何だこいつ面倒臭い彼女彼氏かよ、と言う意見を言う奴には、元勇者の渾身のグーパンチを差し上げよう。きっと物理的に爆散しちゃうぞ。


 何ておふざけはさておき、これからのざっくりとした予定を話すとしよう。


 まず始めに、俺の元勇者の力で目立ちまくる。

 これにより気持ち良くちやほやされつつ、その力に靡かない者を狙って俺が話し掛けに行き、やがて生涯の友とも呼べる親友をこの手に掴みとってみせるのだ。

 だから、この入学試験は目立つにはもってこいなのだが……。

 


「———くそっ、どうして誰も居ないんだよ!」



 本当に誰も居ない。

 勇者時代を思い出している時でさえ探していたのに、それでも見つからないのである。

 流石に遅刻という、悪い方で目立ちたくはないので、ヤケクソ気味に吐き捨てた。


「べ、別に良いし! 別に誰も居なくたって見つけられるし! 【気配感知】すれば楽勝だし!」


 そう憤慨しつつ、俺は【気配感知】のスキルを発動させる。

 俺のスキルは、一種の技能がスキルとして発動までのプロセスを簡略するものと考えたら分かりやすい。


 何て考えている間に、大勢の気配が密集した場所が4つほど見つかった。

 ついでに校舎にもちらほら気配が窺え……俺を見ている奴も何人か居た。


 …………。


「はい、俺は怒りました。こうなったら1番多い所からしらみつぶしに行ってやんよ! 絶対、意地でも間に合ってみせるからな!」


 俺を見て嘲笑っているであろう屑達にキッと視線を飛ばしつつ、俺は気配の方へと駆け出した。










 ———それから十数分後。









「キョータ・ヤソラ、2分の遅刻だ。減点は免れないと思え」

「…………うっす」


 駆け回って軽く息切れ中の俺は、第3屋外訓練所の総試験監督の男を始めとした試験監督達から冷たい眼差しを受けていた。

 ついでに座っている受験生からも白い目で見られた。



 …………誰も1番少ない所が第3屋外訓練所だと思いませんやん。



 こうして俺は、開始早々悪い方で目立ってしまったのだった。


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 衝動で書いて投稿しました。

 いわゆる見切り発車というやつです。


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