第8話 痴話喧嘩?
二人のやり取りを眺めている分にはいいけど、そこに私を組み込まないでー。
瀬尾ハルくんは、須川くんの脳天にチョップしてから、私の方に顔を向け、小さく手を振って
「はいはい。お邪魔しましたーっと。何かあったら言って。樹の成敗は年中無休24時間受付中だから」
能天気な口調で能天気な言葉を残して、『瀬尾春斗』という名の台風は過ぎ去って行った。
はぁっ……疲れたー。
「無愛想だってさ。オレら」
素っ気ない口調で言ってくる須川くん。
「そうね」
同じく無愛想な表情をして、素っ気なく返す私。
私と須川くんが、まるで犬猿の仲みたいな、そんな言葉のやり取りに何だか心臓の奥辺りが、くすぐったくなる。
そして、こんなやり取りを見ている久保さんにとっては、私と須川くんって仲が悪いように見えるはずで、きっと安心するだろうし、好都合でもあったりする。
視線も合わさずに、そのまま無言の状態で時間が過ぎていき、放課後をむかえた。
帰宅部の私はバス通学で、古町さんは電車通学、上田さんは自転車通学と、みんなバラバラだから、放課後に3人が集まる事も無く、そのまま帰宅のはずだった。
教室から出ていく人が多くなって、当たり前だけど教室にいるクラスメイトの人数は減っていく。
そんな中、チラチラと私と須川くんを観察するような視線を感じる。
机の上に置いたスクールバッグの中に教科書類を入れながら、『はぁっ』と、小さく溜息がこぼれてしまう。
「それにしても、須川くんってモテモテだねぇ」
まだ隣に座って、私と同じく帰り支度をしている須川くんに、皮肉交じりの可愛気の無い言葉を吐き出す。
「ん?それは無い」
短い言葉で断言してくる須川くんの口調は、やっぱり素っ気ない。
「それこそ無いでしょ。ほら、久保さん達が見てるよ」
華やかな女子グループの面々が集まっている方向にチラっと視線を投げ掛け、言葉を紡ぐ。
――と、横から大きな溜息が聞こえた。
「オレじゃなくて、村瀬を見てんだよ」
「はぁ?……意味わかんない」
今度はトントンと机を指先で叩く音が聞こえてくる。
私と須川くんは、顔を見合わせずに喋っているけど、苛立っている事くらいは分かる。
「嫉妬だろ。嫉妬」
「だから、須川くんがそれだけモテるって事じゃないっ!」
須川くんは何を言っているんだろう?って、私も負けずに苛立ちを隠さない口調で応酬。
「何だかなぁ……。相手はオレじゃなくてもさ、誰でもいいんだよ」
「はっ?」
須川くんの呆れ切ったような口調と同じく、私も呆れたように言葉を返す。
「村瀬が可愛い過ぎるから、お前に嫉妬してるって事」
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スロー展開でスミマセン(ぺこり)
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