第3話 午後のHR

 須川くんの席に座っていたのは、私の友達。

 私を含めて、グループの女子全員に対してイヤミを言われて、肩身の狭い思いをしている友達に申し訳ない気持ちになる。


 私と一緒に居るからって思われるのはイヤだけど、それは私の自惚れか……。

 私も他人の事を言えないくらいに性格が悪いなって思い直す。


 ――反省。


 自他共に認める容姿を持っているからと云って、それが何?って思ってるはずなのに、これは私も無意識のうちに友達を見下している事になってしまっている。

 嫌味を口に出して言っている女子の方が、まだ救いがあるかも知れない。


――自己嫌悪。


 休憩時間が終わると、私は須川くんの机を戻すのも、いつもの事。

 教室に戻って来た須川くんも、それが当然とばかりに、何も言わずに大きな欠伸をして、ドカっと椅子に座る。


 午後は球技大会のメンバー決めだった。

 種目はバスケットボール。

 男子の部、女子の部、男女混同の部の3種で、1チーム6人。


 5人じゃなくて6人なのは、男女混合で男女3人ずつ選べるようにって意味と、必ずメンバー交代して、5人だけで試合が出来ないようにするための配慮だと思う。


 何にしても私には関係の無い、応援係になるはずで、何の興味も無いはずだった。

 運動が苦手と云う事は、元1年のクラスメイトは知っている事だから。


 私がメンバーに選ばれる事は無い。

 私がメンバーに選ばれる訳が無い。


 メンバー決めのHRが始まると、賑やかになる教室。

 男子も女子も主力は、男子チーム、女子チームにそれぞれ集まる暗黙のルール。

 男子のバスケ部員も女子のバスケ部員も、当然そっち側でリーダーになるのも当然の事。


 リーダーが率先して、それぞれメンバーを選んでいく。

 もちろん、私も私の友達も選ばれる事は無かったし、分かっていた事。


「……で、男女混合はどうする?」


 クラスメイトの誰かの声が聞こえる。


 他のクラスもそうだろうけど、男女混合チームは基本的に、やる気の無い人の集まりになるのは1年の時に分かった事。


 下手に勝って、何試合もしたくない人が集まるから、試合をしてもダラダラとなりがちでハッキリいうと、試合している人も観ている人も、欠伸が止まらないくらいに、つまらない。


「じゃあ、オレがするよ」


 隣の席から素っ気ない声が聞こえた。

 チラと隣を見ると、手をあげた須川くんが、つまらなさそうな顔をしていた。


 とてもやる気があるようには見えない顔には、早くメンバー決めを終わらせたいって書いてある。


 うん、メンバーをサクッと決めちゃって下さい。

 こういう人がいると助かるよ。


*************

次話あたりから話を少しづつ進めていく予定です。

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