第2話 昼休み

 私は男性不審になっているのかも知れない。

『もっと私の内側を見てよ!』

 と、心の中で叫ぶ声が大きくなっていった。


 それこそ、今、一緒にお弁当を食べている友達のように。

 この子たちのルックスは、決して男子受けしないのかも知れない。

 けれど、人の悪口なんて聞いた事が無いし、性格のいい子ばかりだと思う。

 その点に関しては、私は友人に恵まれたのかも知れないと思う。


 食事も終わり、お弁当箱を片付けていると、いつの間にか須川くんが自分の席の後ろに立っていた。


 須川くんの席に座っている友達が、お弁当箱を片付け終わってから


「ちょっとだけ、ゴメン」


 素っ気ない口調で言って、机から教科書を取り出した。

 そのまま教室の出入り口の前に立っている別のクラスの男子に、その教科書を渡して短い会話をしていた。


 その素っ気ない口調とは裏腹に、わざわざ友達の食事が終わって片付けるのを待ってから、邪魔にならないタイミングで、やってきたさり気ない気遣いとかは、結構、私の中でのポイントは高かったりする。


 普段から彼も素っ気ない感じで、騒がしくないのも助かっているから、元々、須川くんに対して悪い印象は持ってなかったのもあるかも知れない。


 隣の席でぼんやりとしている彼も、身長は高くないのだけど、顔はカッコいい系だし、私と違って運動神経も良いから女子からの人気は高かったりする。


「わざわざ須川くんの席に陣取らなくてもいいじゃん」


 今だって、あんな声が聞こえるくらい人気はある。

 あー、本当に面倒くさい。


 須川くんと話したければ、自分から声をかければいいじゃんって思う。

 その須川くんも、その声が聞こえたのか、女子の方に顔を向けて、苦笑していた。


 教科書を受け取った須川くんの友達に至っては


「ほら、相変わらずモテモテの樹。話かけてあげればー?」


 なんて、大きな声だけど決して悪気は無さそうな口調で、ズバっと直球。

 教科書を丸めて、その教科書で須川くんの背中をバシバシを叩いてから


「じゃあ、またなー。教科書サンキュー」


 何もなかったかのようにそう言って、須川くんの友達は立ち去って行った。

 教科書を忘れて、友達の須川くんに借りに来ただけなのだろうと思う。


 その場に居難いのか、須川くんも教室から出ていくのを、ぼんやりと眺めていた。

『須川くんも、大変だなぁ』と、思いながら……。


 華やかな女子グループの子は、立ち去っていく須川くんの友達を睨んでいたのだから、須川くんも教室にいたくないよね。


 うん、須川くんの気持ちは凄く解かるよ。

 自分の事をとやかく言われるのもイヤだけど、友達に敵意を剥き出しにされるのも本当にイヤだよね。

 

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