ただ静かに学園生活を過ごしたいだけだった

ふー

第1話 プロローグ

 チャイムが教室内に鳴り響き、教室内が一気に騒がしくなる。

 今から生徒達が待っていたラインチタイム。

 男子も女子も各グループに分かれて、民族大移動が開始している。


 1年生の時も同じクラスだった須川樹が、何も言わずに机を私の方に寄せて、そして他の男子の元へと歩いていく。


 よく私の事を分かっていると云うのか、何なのか分からないけど、私はルックスは可愛いと言われている。

 けれど、いつも不機嫌そうに無愛想な顔をしていて、所属するグループは地味系と言われている女子と一緒に過ごしている。


 その事に今でも不思議がられているけど、1年から同じクラスメイトからは、

『村瀬美佳は可愛いけど、無口だし、無愛想だし』との評判が定着していると思う。


 実際にそうだから、クラス全員、いや学校の生徒や先生も含めて全員から、早くそう思われたいと思っている。

 私の周囲に、所属するグループの女子友達が数人やってきて、くっつけられた席に座り、お弁当をひろげ始める。


 華やかなグループとは違って、私たちは特に談笑しながらではなく、淡々と黙々とお弁当を口に運んでいく。


 ファッションやコスメ、恋愛の話で盛り上がっている華やかなグループの女子がチラチラと私の様子を伺っては


「村瀬美佳らしいね」

「でも、イヤミだよねー。ああやって、村瀬が可愛いってアピールしてるんだよ。周りに地味系ばかり集めてさ」


 口調に棘が散りばめられた心無い言葉が聞こえてくるのも、いつもの事。

 だけど、もう慣れたからといって、傷付かないわけじゃない。


 一緒にお弁当を食べている友達にも、その声は聞こえているはずだけど、

『美佳も大変だね』

 って、顔をしているのが救い。


 そう、私が所属しているグループには、流行やオシャレや恋愛と云ったモノに興味がないのだから。

 ――話題にしないだけかも知れないけど。


 そして、華やかなクラスの女子の中心メンバーの魂胆も分かっている。

『1年生の時に男子から人気があった私が、そっちのグループに行ったら困るんでしょ?』

『だから、私の事は放っておいてよ』

 とは常々、思っている。


 1年生の時はそれこそ、結構な人数の男子から告白されていたけど、どれも理由は『可愛いから』

 その度に、可愛い女の子だったら、顔がよかったら、それでいいの?って思う。

 私は私の内面を見て欲しい。


 当然、お断りして、女子からも男子からも次第に

『何だよ。あいつ。』

『ちょっと可愛いからって、あの子お高くとまってるよね』

 なんて、言われるようになっていった――。


***********

スロー展開です。日常をゆっくりと……。

話が動き出すのは何話になるのか……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る