姉の親友に初めてを奪われた。なぜかモテるようになった

藤白ぺるか

第1話 姉の親友

 本作品は小説家になろう『ノクターンノベルズ』にて、別名義『くろこーひー』の名前で投稿している『先輩も同級生も中の具合はちゃんとイイ(仮題)』を改稿したものです。


 カクヨムの禁止事項に抵触しないよう表現がマイルドになっています。えげつない18禁の表現が読みたい方はノクターンの方もどうぞ。タイトルは後で変えるかもしれません。


 では、姉の親友に初めてを奪われてから主人公がモテはじめていくスクールセックスラブコメをどうぞ。


 ——————



 高校二年生の春。

 健全な男子高校生である藤原創也ふじわらそうやは、新たな気持ちでまたこの一年を過ごそうと思っていた。


 教室では見慣れたクラスメイトたちがそれぞれに会話し、ガヤガヤと話題に事欠かない。

 この学校ではクラス替えがないため、一年の時から続くクラスメイトがそのまま在籍している。そのお陰で新学期初日からこうして自分が仲の良くしてきた友人と会話できているのだ。


早乙女さおとめさん可愛いなあ……」


 創也はとある人物に視線を向けながらつぶやく。

 このクラスではとびきり美人で、一年生の頃から学年問わず注目されている人物。


 それがクラスの女神であり清楚代表、早乙女鈴架さおとめすずかである。

 鈴架は成績も優秀で家もお金持ち、生徒会書紀としても活動し、誰もが認める美貌を持つ生徒。


 胸まで伸びた艷やかな黒髪にお人形さんのように小さく整った顔。

 クールそうに見えて、たまに友達と会話している時に見せる笑顔は、このクラスの男子なら誰でも一度は胸をときめかせたであろう。

 創也もその一人で、鈴架は彼の憧れの人物でもあった。


「サッカー部のエースの先輩も早乙女に告白したけど振られたって話だぜ?」


 創也のつぶやきに対して返したのは、彼の前の席の男子生徒——皆岸海人みなぎしかいとだ。

 海人は爽やかなイケメンで、バスケ部に所属する生徒。一年の頃からなんとなく創也と友達となり、今までその関係は続いている。


 創也とは違い、海人には同い年で同じバスケ部に所属する彼女がいる。

 だからこそ創也は、海人の意見にはよく耳を傾け、女性について教えてもらっていたりもするのだ。


「へえ、スポーツができるイケメンでも早乙女さんはOKしないのか」

「本当にガードが固いみたいだぜ。でも、ああいう人に限って、人には言えない何かを抱えていたりするんだよなあ」

「なにそれ」

「真面目そうに見える人も案外裏の顔があったりするってこと」

「はあ……」


 海人の話を聞いて、創也は半信半疑でため息をつく。

 鈴架のような清楚で皆に注目されるような人に裏があるとは到底思えなかった。

 創也は美しい彼女を眺めながら、自分には縁遠い人だと、考えることをやめた。



 ◆◆◆



 その日の放課後。


 本当なら一年の頃から所属していた文芸部——もとい文芸同好会の活動がある。

 しかし、昨年卒業していった先輩がいなくなったことにより、所属している生徒は創也だけになってしまった。同好会としてはまだ存在しているが、人数が一人しかいないため、わざわざ学校で活動することもなくなってしまっていた。


 だから創也は学校が終わるとそのまま家に帰宅し、二階の自室で一人ゲームをしようとしていた。


 しかし、一時間が経過した頃、なにやら階下が騒がしくなった。

 何かあったのかと思い、リビングに顔を出してみるとソファに見慣れた人物が座っていた。


「やっほー創也。帰ってたんだ。あ、一緒にお菓子食べるー?」

「そうちゃん! なんだか久々に見たかも。ここには何度も来てるけど、最近は顔合わせなかったもんねー」


 創也に対し、気軽に話しかけてきた人物。

 それは、彼の姉である藤原夏凪ふじわらかな。そして隣にいるのは姉の親友の常盤水波ときわみなみだ。


 二人とも創也の一歳年上の高校三年生であり、水波は生徒会副会長でもある学内でも有名人。

 顎下まで伸ばしたボブヘアに屈託のない笑顔。誰とでも仲良くなれるような明るい性格は昔から変わらない。顔が良すぎるほどの美人なのに、創也のような目立たない人とも仲良くしてくれる存在だ。


 水波が創也の家に遊びに来るようになったのは二年前、中学三年生の時からである。

 夏凪が高校生になり水波と仲良くなったことで、何度もこの家に足を運ぶようになった。


 そして、弟である創也とも何度も顔を合わせているうちに、二人は一緒にゲームをしたりして遊ぶような関係になった。

 ただ、ここ最近は色々なタイミングが重なり、水波の顔は見ていなかった創也。だから彼女の顔を間近で見たのは数ヶ月前だった。


「ども」


 創也は軽く挨拶をするも、それ以上無駄な会話はしなかった。

 水波はクラス一の美人である早乙女とは別ジャンルの美人。顔が良い相手に対しては、どこか少しぶっきらぼうになってしまう創也。それは何度顔合わせしても、なかなか慣れるものではなかった。


「あ、そういえば今日からお父さん出張らしいよ」

「え……初耳なんだけど」

「私もさっきLINEで聞かされた」

「うわあ。こういう小さなことの積み重ねがあったから母さんにも捨てられたのかもね」


 藤原家の両親は離婚している。

 離婚原因は互いの性格の不一致がここに来て限界に来たのだろう、母は子供ができてから家のことばかりでストレスを抱えていた。

 しかし、父はそれに気づかず、出張だって多い仕事。家にいる時間はとても少なかったため、いつの間にか愛想をつかされていた。


 ただ、二人の子供はどちらのこともそれほど嫌いではないため、恨んでいるようなことはない。

 父についてきたのは、これ以上母に負担をかけたくないという想いからだ。だから創也も夏凪もたまに母と会って食事をしたりしている。


「——ってことらしいから、今日は私お泊りするから。よろしくね、そうちゃんっ」

「えっ……!? ああ……はい。よろしくです」

「反応悪い〜」


 父が出張で家にいないことに加え、さらに水波が家に泊まるという事実。

 水波はたまにこうして泊まりにも来ていたので、驚くほどのことではないのだが、やはり美人の姉の友達が同じ家の下で一夜を過ごすということには、意識せざるを得なかった。



 ◆◆◆



 三人で一緒に夕食を取ったあと、軽く勉強しながら過ごし、いつも通りにお風呂へと向かった創也。

 扉に手をかけ、ガチャリと風呂場へ通じるドアを開けた。


 しかしそんな時だった。


「————うわあっ!?」


 なんとそこには、お風呂から出たばかりの一糸纏わぬ姿の水波がいたのだ。

 細くしなやかな体に凹凸のある魅力的なボディ、濡れた髪と体に付着した水滴。それらのせいで彼女の色気がより一層出ていた。


「……そうちゃんのえっち」


 一瞬驚いた顔をした水波。

 しかし、次の瞬間には恥ずかしがりながらもニヤけた顔を向け、自分より年下の男の子をからかうようにそんな言葉を言い放った。


「ご、ごめんなさいっ! でも、鍵はかけてええっ!?」

「あはは……ごめんごめん、忘れてた〜」


 創也はすぐに扉を閉めた。

 扉越しに水波の謝罪が聞こえたあと、すぐに自室へと戻った。


(常盤先輩の裸、常盤先輩の裸、常盤先輩の裸……!)


 初めて見る女子の裸。正確には小さい時には姉の裸は一緒にお風呂に入っていた時には見てはいるが、中学生以降は見ていない。だから大人の体に成長した健康的な女子の体を生で見たのは初めてだった。


 創也はしばらく悶々としつつも、水波がお風呂から出ていったのを見計らい、自分もお風呂を済ませた。



 ◆◆◆



 お風呂から出て、ドライヤーを使って髪を乾かしたあと、トイレに向かった創也。

 まだ水波の裸が目に焼き付いているなか、ガチャリとトイレのドアを開ける。


「…………さすがに狙ってない?」


 扉を開けた瞬間、そこにはパンツを下ろし、下半身を丸出しにしながらちょろちょろと小便をしていた水波がいたのだ。

 その水波が苦笑いを浮かべながら、頬を紅潮させた。


「あ……あ……ごご、ごめんなさい〜っ!! って、鍵! 鍵かけてくださいよ〜!?」


 風呂場と同じような状況に加え、さらに水波の放○シーンまで見てしまった創也。

 すぐに扉を閉めたものの、顔が熱くなりその場にへたりこんでしまう。


「あ、鍵か。いっつもお家では鍵なんてしないから、つい……てへへ」


 確かに創也だって基本的には鍵をせずトイレを済ませている。

 大体は音で今誰かがトイレに入っているかわかるのでそれで判断していたし、今まで姉とこうやって鉢合わせしたこともなかった。だから安心しきっていたのだが、今日は色々と気が回っていなかった。


(今日に限って……俺、悪くないよね……?)


 創也は二回連続、水波のあらぬ姿を見てしまい、もうどうにかなりそうだった。


 するとトイレを済ませて出てきた水波。

 彼女は姉の服を借りたのか、家着のようなゆったりとした寝間着姿になっていた。


 そうしてへたりこんでいる創也に近づき、耳元で一言。


「あとでそうちゃんの部屋に行くから、久々に寝るまで一緒にゲームしよねっ」

「えっ…………」


 この人は何を考えているのだろうと思った創也。

 しかし水波は笑顔のまま二階へと上がり、姉の部屋へと戻って行った。


 創也にはその心情は読み取れなかった。




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