第2話会議だよ!全員集合!
二人が集会所に入って暫くした頃、元気のいい男の声が木霊した。
「うお!?なんだこりゃ、扉がねぇ!?」
ロ「あの声は…」
「はぁ、きっちり十分です。師匠。」
もっもっ。と大量の大福を頬張りながら確認した時計には開始予定時刻を十分過ぎた時が示されている。
やっと来たかと疲れたため息を吐き、恐らく喧しくなるだろう未来を予想してあまねとロクノは耳栓を装着した。
「おいあまね!てめぇだろ玄関壊しやがった脳筋バカ!!」
ロ「聞き捨てならないね禅。それより先に遅刻を詫びなさい。」
「耳栓をしてもうるさいとは…その喉、切り出して塩漬けにでもしましょうか?」
禅「なんで漬けるんだよ!?食えねぇだろ!!」
「まさか自分ごときが食用になれるとでも?全ての食材に謝罪してください。」
勢いよく開けられた会議室の扉はスパァンとしなり、鬼の角を生やした男の子こと西の副長、
そんな禅にも冷静に言葉を返し鼻で笑うあまね。その足には一匹の茶トラ猫が擦り寄って喉を鳴らしていた。
「あら?あなたは…ねこさん?」
ね「やぁあまね!玄関見たよ〜、力のコントロール上手になったね。さすがだ!」
禅「じゃねぇだろ!?お前仮にも組長なんだから叱れよ!?」
ね「なんでさ。私は西の組長だよ?それをするなら東のロクノの仕事だろ?」
人型に戻り満足そうにあまねを抱きしめるこの妖怪は西の組長。猫妖怪のサクラだ。あまねは親しみを込めて”ねこさん”と呼んでいる。
サクラもその事に満足しているのか、元々が飼い猫だったからかあまねにはよく懐いていた。
その事をよく思わないのは師匠であるロクノだ。今もあまねにしがみつくサクラをジトォと睨んでイライラしている。
ロ「あまねを離しなさいサクラ。この子は僕の弟子だよ。」
ね「ケチクサイ事言うなって〜。あ、そろそろ他の連中も来るんじゃない?ね、あまね!」
「そうですね。もうそろそろ二十分になる…
紫「僕ならもういるよ?ね、
絲「はぁ…あまねお前、建付け悪ぃからって壊すなよな玄関。」
ロ「僕のあまねに説教かい?百年早いよ絲。」
絲「短命の人間が年月を語るんじゃねぇ。」
いつからいたのか。会議室の入口からジッとこちらを見ていた南の組長と副長、絲と紫陽は睨み合う東と西の間を仲裁するように割って歩き席に着いた。
口数の少ない絲と見た目が可愛い女の子である紫陽のコンビはなんともほのぼのとさせられる。
後は北の総元締だけだ。
北「…玄関、あまねかい?」
「あぁ、総元締。建て替えしやすい口実を作っておきましたよ。」
北「あっさりしてるね。でも君の給料から天引きだ。」
小学生ほどの身長をした、フードを目深にかぶった妖怪があまねに声をかける。
トレードマークの長い鼻が天狗である事を示すこと以外、その顔を見た者はいないがこの鬼ノ門組の長だけはあるのか誰よりも落ち着いた話し声だ。
あまねは給料天引きの言葉を聞いてすぐに禅を指さした。
「大丈夫ですよ、総元締。あそこの鬼が気前よく払うって言ってますから。」
禅「…それって俺の事か!?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?」
禅「言うかボケが!!てめぇのケツ持ちなんか誰がするかよ!?」
Why!?と全力で返す禅に、これは簡単には折れないなと悟るあまね。
少し考えた後俯き鼻をすすり出した。
「禅…人間の私は寿命が短いから無理するなっていつも言ってくれるのに…」
禅「!?」
「あれは嘘だったの…?」
ね「禅があまねを泣かした。」
ロ「会議前に始末していいかい?サクラ」
紫「禅…払ってあげなよ」
禅「俺が!?なんでぇ!?」
「ぐすん…」
禅に背を向けて泣き真似を続けるあまねに、周りは白い目をチクチクと禅に突き刺す。
その状況に耐えきれなくなってきた禅は顔を真っ赤にして総元締に乱暴に叫んだ。
禅「なんだよクソ!!オラ総元締、聞いてたろ!?払ってやんよクソが!!」
総「はぁ…素敵な性格に育てたね、ロクノ。」
ロ「はてさて何の事でしょう?」
禅「おいあまねコレでいいんだろ!?もう泣くのやめろ!!」
「やりました。紫陽、会議が終わったら買い物に行きましょう。可愛い服屋を見つけたんです。」
紫「やったぁ!師匠、行っていいです?」
絲「はぁ…好きにしろ。」
わぁい!と大はしゃぎの紫陽と微笑ましく笑うあまね。禅は悔しそうな顔だが、そんなあまねの顔を見て頬を染めた。
禅「ちっ。人間の癖に。」
ロ「だったらそんな人間に惚れないでよね。」
禅「惚れるか!あんなサイコ脳筋女!」
総「いいから会議を始めるよ。あぁそうだ禅、お金は一括で天引きするから。三千万、ちゃんと用意しておいてね。」
禅「ヒュッ…。」
総元締がさぁ始めるよ。とかける声にそれぞれが席に戻って行く。会議スタートだ。
最凶の退治屋は小学生?! ペンギン @Yun77
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