最凶の退治屋は小学生?!
ペンギン
第1話東の組長と副組長、見参!
時代は令和。様々なファッションに電子機器、娯楽の発展したこの時代にはいまだに”妖怪”が存在している。
そいつらは人々を襲い、血肉を喰らい不幸を運んだ。
ただ人間も黙ってされるがままというわけではない。
特殊な力を持った人間が集まり、陽の気を持つ協力的な妖と手を組み大きな組織を立ち上げたのだ。
それが”鬼ノ門組”
彼らは東西南北にブロックを分け、そのブロックを統括する組長とサポートの副長を筆頭に日々妖怪退治に勤しんでいた。
そして今日はそんな東西南北の組長、副長が一斉に集会所に集まり会議をする日。
会議の内容は最近発見された”呪われた僧侶の即身仏”の処分について。
あまりにも強い呪いのかかったこの即身仏は最早呪物と言っても過言ではないだろう。
一筋縄ではいかないこの物騒な代物をどうするか。それを話し合うのだ。
「寒くなってきましたね、ロクノ師匠。もう少しで集会所が見えますよ。」
ロ「そうだね、あまね。この時期は風邪を引きやすいから気をつけるんだよ?君は不摂生だから。」
「うぐっ。き、きちんと食事は摂っています。」
ロ「偏食極まりないけどね。さて、今日は誰か来ているかな?」
人気のない田舎道を進む人が二人。
東ブロックを担っている組長、甲斐ロクノとサポート役である副長、甲斐あまねだ。
二人はほのぼのと話をしながらゆっくりと前に進んでいる。この会議、定期的に開かれるものだが東以外の組長達は誰一人として時間通りにこないのだ。
理由は簡単。
東を除く全てのブロックの頂点に立つのは全員妖怪だからだ。
元々の悠長な性格もあるのだろう。彼らは何事にもルーズな一面がある。
その事にあまねは少しの不満を持っていた。
「どうせ誰も来ていませんよ。一番早くて10分遅れじゃないですか?」
ロ「ははは!あまねは厳しいね。でも分からないよ?西の副長の禅。あの子、この前の会議であまねに”次の会議は絶対一番乗り決めてやる!”って騒いでいたじゃないか。」
「そんなの忘れてますよ。あいつ、やたらと私に絡んできますが私に宣言した事で成し得た出来事、何一つとしてありませんから。」
ロ「たしかにね。まぁ彼らは元々悠長な性格だ。こんなに時間を気にするのは我々人間くらいなのかもね。」
「はぁ…。まったく、なんで時間を決めていると思っているんでしょう。」
大好きな師匠であるロクノの言葉にもしかめっ面をするあまね。
そんな愛弟子を見てずっとニコニコと笑っているロクノは、もう目の前に見えてきた集会所を指さしてあまねに声をかけた。
ロ「ほら、怒らない。集会所見えたよ。」
「本当ですね。では早速入って会議内容を確認しましょうか。…あれ?開かない。」
ロ「おや?おかしいね。僕達の霊力は登録しているから触れただけで解錠されるはずなのに。」
ガタガタ、ガタガタと横に玄関扉を引くが一向に開く気配のないその扉にあまねのイライラも増していく。
集会所は誰もが勝手に使えるわけではない。これまでの事件の資料や武器なんかがしまってある場所でもあるのだ、ここに入れるのは特殊な装置で霊力が登録された組長、副長のみ。
だがしかし、建物自体が古すぎてガタがきているのだろう。
昭和を匂わせるような佇まいに手入れのされていない庭だ、この建物もそろそろ改修しなくてはならない。玄関を開けるのもスムーズではないのだ。
「はぁ。仕方ないですね。これは仕方ないですよね?」
ロ「何をする気だい?あまね。」
「直さないのが悪いんです。と言う事で、爆破します。」
ロ「な…っ!?爆破ってっ!!」
「…」
ロ「天才じゃないかあまね。よし、僕は少し離れてるから建物が吹き飛ばない程度で壊しておくれ。」
「はい、師匠。大丈夫、玄関だけですので。」
親指を立てヨシヨシと頭を撫でるロクノに満更でもない顔で喜ぶあまね。
この東ブロックの組長と副長は人間ではなる事が極めて難しいと言われているこの地位に若くして就いている事からとても有名だが、どちらもぶっ飛んでおかしいと言う事でも有名なのだ。
そんな二人が揃ってこんな場面に居合わせるのだ、ぶっ飛んだ事が起きてもおかしくはない。
「よし。玄関扉の四隅に小さな起爆札を張りまして…っと。ではでは。爆!!」
ドォォオン!!!
ー…パラパラパラ…ー
ロ「おぉ〜。力のコントロール上手になったね。さぁ扉も開いた事だ、中に入って早速温まろう。」
「はい、師匠。それにしても今日はとても冷えますね。あ、そう言えば柿屋の塩大福を買ってきたんです。アホ共が来る前にお茶と一緒にお出ししますね。」
ロ「え?本当かい?いやぁ嬉しいな。僕あそこの和菓子屋大好きなんだよね。ありがとう、あまね。」
「いえいえ。この玄関は後で禅にでも片付けさせましょう。」
ロ「あっはは!本当にいい子だ!」
もくもくと広がる白い煙の中、仲のいい師弟の声が広がる。
会議スタートまでもう少しだ。
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