第5話 「氷の檻」



冷凍庫の中で、私の体が徐々に凍りついていく。

白い死体たちの冷たい肉が、私を包み込んでいた。


「もうすぐ完成ね」


シャネルの白いドレスが、血に染まっている明美。

その血が、すぐに凍って白い結晶となる。


「この山には、もっと多くの秘密があるの」


彼女が冷凍庫の奥の壁に触れると、隠し扉が開いた。

そこには巨大な氷の洞窟が広がっていた。


無数の氷柱の中に、人々が封じ込められている。

全て完璧な保存状態。

永遠の苦悶を浮かべた表情のまま、氷の中で眠っている。


「私の最高傑作たち」

明美が歓喜の声を上げる。

「冷たさが、美しさを永遠に保つのよ」


洞窟の壁から、白い触手が伸びてくる。

その先端の牙が、氷柱を噛み砕く。


中から人々が這い出してくる。

しかし、もはや人ではない。

全て明美の顔を持つ、白い肉の怪物。


「さあ、氷の檻の中で、永遠の美を手に入れましょう」


私の体が、完全に凍りつこうとしていた。

血管の中を、白い結晶が走る。


最後に見たのは、無数の明美が歪んだ笑みを浮かべながら、私に牙を向ける光景。


(続く)

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