第4話 「白い死体」



山荘の地下室。

肉置き場として使われていた冷凍庫の中で、私は震えていた。


氷の壁に、無数の人影が浮かび上がっている。

全て白く凍り付いた死体。

その表面には、苦悶の表情が永遠に刻み込まれていた。


「隠れても無駄よ」


明美の声が、氷を震わせる。

純白のディオールコートの下から、白い肉が零れ落ちながら、彼女が近づいてくる。


「ここが私のコレクション」


冷凍庫の中の氷が、突然溶け始めた。

中から白い死体が、次々と動き出す。


「皆、私の一部」

明美が艶然と微笑む。

「数十年分の狩りの成果よ」


死体たちの顔が、全て明美の顔に変わっていく。

その口からは、真っ白な牙が生えている。


「あなたも、永遠に美しい白い死体に」


冷凍庫の扉が、内側から凍り付いていく。

逃げ場はない。


白い死体たちが、一斉に襲いかかってきた。

その冷たい肉が、私の体を包み込んでいく。


外では吹雪が、さらに激しさを増していた。


(続く)

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